武力不行使原則の課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 06:17 UTC 版)
「武力不行使原則」の記事における「武力不行使原則の課題」の解説
国連憲章は武力による威嚇・武力行使を慎むべきことを定め、「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為」に対しては国連安保理に軍事的強制措置すらも発動可能な権限を認めた(国連憲章39条、42条)。さらに自衛権行使の場合など、武力行使が例外的に認められる場合も規定され、不戦条約には欠けていた強制措置を補っている。また国連憲章第6章では国際紛争の平和的解決手続きを詳細に定めることで戦争に訴える機会を極小化させているなど、国連憲章は人類の長年にわたる戦争禁止の試みを前進させたものと評価されるものである。しかし一方で、自衛権行使のような強制措置は国内社会における警察権力のように機械的に動くものではなく、常任理事国に拒否権が認められた、国連安保理において行われる政治的決定によって判断されることとなった。例えば仮に常任理事国が国連憲章に反する武力行使を自ら行った場合、この常任理事国の行動が「平和の破壊」にあたるとして強制措置をとるよう安保理に提案がなされたとしても、武力行使を行うこの常任理事国一国のみが拒否権を行使するだけでこの提案は否決されることとなる。このように国連安保理が中心となった国連の集団安全保障体制は武力不行使原則を絶対的に支えるものではなく、むしろ不完全なものと言える。こうした不完全性のため、現に発生する武力行使に対して国連安保理がふさわしい判断や決定をできない事態が国連発足後も往々にして起きており、こうした点に関しては国連憲章2条4項の武力不行使原則が疑問視されることも少なくはない。たとえば、現になされている武力行使について国際裁判がなされた数少ないケースであるニカラグア事件国際司法裁判所判決では、裁判によって常任理事国アメリカの行動を規制することができたとは言い難い。
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