樹種の選択
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 22:52 UTC 版)
街路は木にとって楽な環境ではない。自動車の排気ガスを浴びることが障害の筆頭で、植えられる土が狭く固い場合(そうならない方が例外である)には、それも問題になる。これらには耐性が強い樹種と弱い樹種がある。20世紀後半から各地で街路樹に夜間の電飾をかけるようになったが、これも木にとっては負担要素である。成長すると、交通信号機や道路標識の視認を確保するため、枝を払う必要が出てくるが、これにも耐性の違いがある。さらに気候の適性があり、木の寿命の長さも考慮の要素である。以上のように様々な要素が組み合わさるが、結果として現代では落葉樹、広葉樹が好まれている。 街路樹の寿命は7年から13年ともいわれている。公園や自生林よりも寿命が短い原因として、化学物質の多さ、栄養分・微生物・酸素・水分の不足などがあげられる。水分や養分を吸収するひげ根の多くが地下30センチ以内にあるため、それが痛むと枯れ始める。このため、街路樹に適している樹種は水や酸素の少ない環境に適応しているものが多い。欧米で古くから街路樹となっているモミジバスズカケノキ、モミジバフウ、ヌマスギ、アメリカハナノキ(英語版)などは、本来は氾濫原に生息しており酸素不足の状態に適応している。河川域で生息していたイチョウが街路樹に向いているのも、同様の理由が考えられる。 ただ、樹種選択のせいで直ちに失敗する例は少なく、たいていの木はある程度の負荷に耐えうる。また、いずれにせよ樹木とて不老不死ではない。そこで、不利な種を厳しく排除することなく、様々な街路樹を認める考えがある。21世紀初めには、その土地に昔から自生してきた樹種を優先しようという考えも登場している。 また、後述のように街路樹には効果と弊害が存在する。効果自体が、裏返せば、弊害そのものであることもある(例:風を防ぐ→風通しが悪くなる→汚れた空気・においがこもる、熱がこもり暑くなる)。効果の大きい木ほど弊害(被害)が大きくなることもある。従って、効果を大義名分に樹種を選択し植栽すると、後に大きな弊害をもたらし、各種公共事業で批判されているように、効果以上の多大な弊害、税金の無駄遣い、維持費不足などの問題が発生する恐れがある。そのため、将来を見据え弊害を回避した選択・植栽を心がけることは、その木が効果を本当に発揮することにもつながる。
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