構造・生理作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/24 15:43 UTC 版)
オピオイド受容体のアゴニストとして知られるモルヒネやヘロインと化学構造は異なるものの、メサドンもオピオイド受容体にアゴニストとして作用する。なお、化学構造で見た際には、メサドンが最も単純な構造のオピオイドとも言われる。 メサドンはヒトの体内で代謝されるのが遅く、さらに非常に高い脂溶性を持つため、モルヒネ系の薬剤よりも持続時間が長い。メサドンの典型的な半減期は24時間から48時間なので、ヘロインの解毒や維持療法の際は1日に1回のみの投与で済む。臨床での最も一般的なメサドンの投与方法は、経口液剤である。メサドンは経口投与しても、静脈注射の場合とほぼ同等の効果が得られる。 ただしメサドンも、ヘロインなどと同様に、耐性と依存性がしばしば発生する。最近のこの分野における研究では、メサドンが脳のNMDA受容体に対して、独特の親和性を持つと示された。NMDA(N-methyl-D-aspartic acid, N-メチル-D-アスパラギン酸)が、オピオイド拮抗物質のような活性を示し、精神依存と耐性が制御されている可能性を提示した研究者もいる。これは近年NMDA受容体アンタゴニストであるケタミンに、オピオイドの耐性形成に対する拮抗作用が発見された事に関連する知見である。 なお、メサドンもオピオイドであり、禁断症状が出現し得る。メサドンの禁断症状は、同量のモルヒネやヘロインに比べ緩慢で軽いものの、著しく長引く。それでも一般に、ヘロイン依存症の管理や、薬物乱用の際の注射器の使い回しによるHIV感染などの害を減らすハーム・リダクションの政策には、有効であると考えられている。メサドンの適正な使用量においては、ヘロインへの欲求を減少させるのに有効である。ただし、メサドン維持療法では投薬によってヘロイン依存症の症状が快方に向かうとは限らないため、投与は漫然と行われないように計画される。しかしながら、ヘロイン依存症者の中には、ヘロインよりもメサドンから抜け出す事の方が難しいと感ずる者もいる。これが、このメサドン維持療法の反対派の論拠の1つである。 また、内科医の間でガンの疼痛管理薬として使用した症例報告が出ている。モルヒネやヒドロコドンのような短時間作用性のオピオイドよりも、投与頻度を抑えられるオピオイドを探す医師によって、メサドンによるガンの疼痛管理が試みられている。経口での生物学的利用能、長い半減期による効果の持続性などの利点を持つメサドンは、弱いアゴニストでは効果の無い、ガン末期疼痛に対する選択肢の1つだと言う意見も有る。
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