染織・絨毯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 09:51 UTC 版)
「ペルシア絨毯」も参照 高温乾燥の気候から身を守るための衣服、涼しい床の直上で生活し同じ空間を使い分けるための絨毯、遊牧民にとって住居そのものとなるテント(天蓋)など、イスラーム世界では布が重要な役割を担った。日用品としての布地は大半が無地であったが、装飾のある布は珍重された。ティラーズ(英語版)と呼ばれる銘文の刺繍がある布を、君主が家臣に下賜することが行われ、これを制作する国立の工房もティラーズと呼ばれた。この制度はアッバース朝で拡大し、膨大なテキスタイルを生産した。空引機で作り出されるイスラームの複雑な図案の絹織物は14世紀まで世界市場を独占し、19世紀まで重要な輸出品であり続けた。 絨毯はペルシアやトルコ(アナトリア)が主要な産地であるが、礼拝用に絨毯を必要とすることなどからかつてはイスラーム世界のほぼ全域で絨毯の生産が行われていた。絨毯や掛け布などの贅沢な布は家の中にこの世の楽園を作り出すものであった。ペルシア絨毯の最高傑作とされるアルダビール絨毯(英語版)はティラーズで作られモスクか霊廟に奉納されたものと考えられており、こうしたデザインは速やかに地方に伝播していった。 ティラーズ(英語版)の断片。銘文からマルワーン1世時代(684-685年)と分かる。現存する最古のイスラームの布である。ホイットワース・アート・ギャラリー(英語版)蔵 メダイヨン(中央の装飾枠)に龍と不死鳥が描かれたアナトリアの絨毯。15世紀 動物と狩りの場面が描かれたペルシアの絨毯。16世紀。ルーヴル美術館蔵 黒い布「キスワ」に包まれたカアバ。キスワの寄進は大変な名誉であり、イスラームにおける布の重要性の象徴ともなっている。
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