本編とシナリオとの差異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 09:05 UTC 版)
「県警対組織暴力」の記事における「本編とシナリオとの差異」の解説
本作品は監督の深作が「一字一字出直しするところがない」とまで称賛したように、笠原のシナリオにほぼ従って撮られているが、いくつか削除されたシーンや変更された描写がある。 削除されたシーン 広谷が日光石油の久保所長を脅すシーンの次に、久能が過去の悪事をネタに向井市長を脅迫するシーン、および、脅迫された市長が広谷と川手に無理やり手打ちさせ、そのことを川手が怒るシーンがあった。 広谷組と川手組が二台の車に分かれて射撃しあうシーンの次に、中華料理店にいる広谷を暗殺者が襲い、広谷が返り討ちにするシーンがあった。本編にある海田警部補の台詞、「中華料理店の射殺事件が臭いんだが」とはこのことを指す。また、本作のビデオ版パッケージの裏面には、松方弘樹が中華料理屋で銃を構える写真が使われており、シーン自体は撮影されたものの編集段階で削除されたものと思われる。 海田警部補が初登場するシーンの一つ前に、警官の取り締まりに逆らい暴れだした広谷側の宏道会組員を、海田がハネ腰で投げ飛ばすシーンがあった。これがシナリオ段階での海田の初登場シーンである。 広谷組のチンピラ庄司が裏切り者を刺殺したシーンの次に、漁師町の庄司の実家が家宅捜査され、庄司の兄が「誰がわしらの漁場奪ったんじゃい! 悟を極道にしたんは誰ない!」と叫ぶシーンがあった。配役表を見るとこのシーンにしか登場しない庄司の兄にも役者が割り振られているので、このシーンも撮影だけ行われて編集でカットされたものかと思われる。 変更、追加された描写 シナリオ冒頭での久能の描写は「ねじ鉢巻、サングラス、油の染みたジャンパー、一見仲仕風の男が、グラスの酒を煽り、ラーメンをすすり、ゆで玉子にもかぶりついている。貪欲というよりも、賎しいまでに動物的な活力に溢れた喰いっぷりである。」という荒々しいものだが、本編ではスーツにコートというスマートな衣装に変更されており、どぎつい食事ぶりの描写もない。 本編では、テレビから当時のヒット曲『こんにちは赤ちゃん』が流れる中、チンピラがのたうち回りながら殺されるシーンがある。『こんにちは赤ちゃん』はこの映画の舞台である昭和38年の10月に発売された曲である。時代背景を切り取りながら殴り込みの凄惨さを引き立てる演出であるが、シナリオでは「大貫がテレビを見ている。」とあるだけでテレビに映される内容の指定はない。 ラストシーン、シナリオでは、近づく不審な車に対して懐中電灯を振る久能の姿がストップモーションになり、そこに「久能徳松巡査部長、昭和四十年、~暴走車にはねられ即死。加害車、不明」のテロップがかかり、エンドマークが出る。しかし本編では、久能がハネられ、ぐったりと眼を閉じ死亡するまでを克明に描いてから、テロップとエンドマークが出るようになっている。
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