有意水準に対する批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 20:00 UTC 版)
2010年代初頭に入ると科学は「再現性の危機」に苦しんでいて、研究者も助成機関も出版社も、学術文献は信頼できない結果にまみれているのではないかと不安を募らせている。2017年に72人の著名な研究者が、新たな発見をしたと主張する際の証拠の統計的基準の低さが再現性の危機の一因になっているとする論文を発表した。新発見の統計的有意性を評価するために、科学者が好んで用いる有意水準 α {\displaystyle \alpha } の値は0.05から0.005に引き下げるべきであると、統計学の大家たちは主張する。 その一方、イリノイ工科大学の計算機科学者Shlomo Argamonは「実験する方法が多数ある限り、どんなに小さい有意水準 α {\displaystyle \alpha } の値を用いてもその中に一つの実験方法が偶然に有意になる可能性が極めて高い」と新しい方法論的な基準を求める。実際小さい有意水準 α {\displaystyle \alpha } の値を用いたらお蔵入り問題がより著しくなり、多数の論文が出版できなくなる。 2016年にはこの問題について、アメリカ統計協会が声明を発表し、「どんなに小さい効果でも、サンプルサイズが大きかったり測定精度が十分高ければ小さいP値となりうる」「P値は仮説やその計算の背後にある仮定に基づいたデータについての記述であり、仮説や背後にある仮定自身についての記述ではない」など、P値についての基本的な問題点を整理し、「P値は、それだけでは統計モデルや仮説に関するエビデンスの、よい指標とはならない」ことを強調している。 2019年には科学者800人超が、『Nature』に署名し、P値が有意水準より大きい場合、「有意差があるとはいえない」とまでしかならないが、誤って「有意差がない=薬などの効果がない」と推論する文献は791文献中の51%に見当たったということで、「統計的有意性」を使うのをやめて信頼区間を互換区間という言葉に言い換えて使用すべきだとされた。
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