最も危険なトラック (Most Dangerous Track・Talladega)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/09 20:08 UTC 版)
「タラデガ・スーパースピードウェイ」の記事における「最も危険なトラック (Most Dangerous Track・Talladega)」の解説
デイトナ以上に全開で走行できる上、常に200 mph(320 km/h)近いスピードでバンパーtoバンパーの超接近戦を繰り広げるという理由もあり、事故確率が異常とも言えるほど高い。他車のバンパーを少し角度を変えて押すだけで、ターン・ストレートを厭わず簡単にコントロールを失い、ウォールへ向けて飛んでいく。それがスタート直後やリスタートから数周経った2 - 5列に渡るドラフティング・トレインの中で起これば、当然後続を巻き込んだ多重クラッシュ(いわゆる『ビッグ・ワン(英語版)』)が発生する。 危険なのはドライバーだけでなく観客も同様である。このような超高速でスピンすると、ルーフフラップによる減速はあるものの、マシンはいとも簡単に浮き上がってしまう。1987年にはボビー・アリソン(英語版)がフロントストレッチ側でスピンから浮き上がってしまい、キャッチフェンスへ直撃。衝撃で約100フィート(30 m)に渡ってキャッチフェンスが吹き飛び、観客が巻き添えとなり飛散した破片で負傷する大クラッシュが発生した。これを機に、デイトナとタラデガではリストリクタープレートの装着が義務付けられた。それまでは、最高速が単独走行ですら220mph(354km/h)という全トラック中最速のコースであったが、リストリクター導入後に単独走行190 mph(305 km/hま)で落ち着いた。しかし、ターンでの減速が無いために、平均周回速度200 mphを超えるミシガン以上に危険なトラックであることに変わりはない。 このようにドライバーに限らず観客にも危険が及ぶ事例のあることが、デイトナ以上の最も危険なトラック (Most Dangerous Track) と言われる所以である。改修があってもハードクラッシュを演じ続けるこのトラックは、関係者の中で「宝くじ」とまで呼ばれている。 後述の1987年の事故を現地取材したエド・ヒントンによると、事故で大きく破断したフェンスの周りに陣取っている観客にインタビューしたところ、彼らは「事故の時この席にいた観客が避難して席が空いたのでここに座る事にした。危険である事は分かっているが、(自分が応援している)デイル・アーンハートが勝利するチャンスが僅かでも残っている限り、その瞬間を間近で見届けたいんだ。」と語ったとしており、ある程度のリスクは承知の上で観戦に望む事がファンの間でも心構えとして必要であり、それを承知できない者はNASCARの観戦に訪れるべきでは無い事を改めて認識したとしている。ドライバーや観客の勇気の一方で、保険会社からはNASCAR運営陣に対して「平均周回速度を200マイル(約320 km/h)以下に抑えなければ、レースイベントに対する損害保険の価格を大幅に高騰させる」という警告も繰り返されており、NASCARは1987年以降安全性とスリルの両立に苦心しながら様々な安全対策を施しているとしている。
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