日本語における母音調和
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/02 15:04 UTC 版)
万葉仮名の研究によって明らかにされた上代日本語の母音の法則も母音調和の一種とする説がある。すなわち、 上代特殊仮名遣いの甲類・乙類の違いは母音の違いに基づくものであると考えられる 上代特殊仮名遣いにおいて「有坂・池上の法則」と呼ばれる甲類・乙類の仮名の現れ方の法則性が確認される ことをもって、上代の日本語には母音調和またはその痕跡があったとするものである。 「有坂・池上の法則」とは、次のようなものである。 オ列甲類とオ列乙類は、同一結合単位(語幹ないし語根の形態素)に共存することはない。 ウ列とオ列乙類は同一結合単位に共存することは少ない。特に、ウ列とオ列からなる2音節の結合単位においては、そのオ列音はオ列乙類ではない。 ア列とオ列乙類は同一結合単位に共存することは少ない。 現代日本語でも、固有語と考えられる身体の部位を表す言葉、例えば「みみ」(耳)、「あたま」(頭)、「はな」(鼻)、「ほほ」(頬)、「かた」(肩)、「からだ」(身体)、「はら」(腹)、「ひじ」(肘)、「ちち」(乳)、「もも」(腿)、「また」(胯)、「しり」(尻)などは同じ母音の連続が顕著に見られ、これをもって日本語が原始的な母音調和の痕跡をとどめているともいわれる。日本語をアルタイ語族に含める説の有力な根拠であるとされるが、これらが実際に母音調和であったかどうかは証明されていない。 上代特殊仮名遣の新説を発表した学際研究者の藤井游惟は、現代関西方言話者の発音実験・分析によってオ列甲乙類の音価(それぞれ[o]、[ɔ])導出を行ったうえで、「有坂・池上の法則」は確かに母音調和だが、それは「円唇母音には円唇母音が接続する」という同化現象であり、言語系統とは関係ない、としている。
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