新約聖書学者としてのヘンゲル
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「マルティン・ヘンゲル」の記事における「新約聖書学者としてのヘンゲル」の解説
マルティン・ヘンゲルは新約聖書成立期における初期ユダヤ教の専門家であった。とりわけ、パレスティナ地域のユダヤ教におけるヘレニズムの影響を専門的に取り組んだ。当時のユダヤ教とヘレニズムが互いに複雑に重なり合う形で影響を与え続けていたことを彼は明らかにし、宗教史学派による大まかな推論を否定した。とりわけルドルフ・ブルトマンのテーゼにある問題点を指摘した。研究者として幅広い方面から評価を得ていたヘンゲルであるが、新約聖書学の一般的傾向に対して批判的見解を明らかにした。さらに、様々な傾向を示す諸文書から成立している新約聖書を一括りにして理解することに懐疑的な判断を下した。 マルティン・ヘンゲルは福音書の表題(マルコ福音書等)を自然なものとしてそのまま受け入れることを支持した。なぜなら、その表題が多くの写本において同じ様に存在しており、福音書記者名が後付けされたとする証拠がまったく認められないからである。福音書記者名の後世の後付けという図式でもって、今日まで聖書釈義家たちの頭の中で非歴史的な幻影が作られているとヘンゲルは見なしている 。新約聖書学において定説になっているQ資料の存在をヘンゲルは疑問視し、言葉資料Qなるものを現代における疑似科学神話であると断じた。言葉資料Qではなく、ルカ福音書を用いてマタイ福音書が書かれたと彼は推定した。しかし、文献上の依存関係モデルが共観福音書問題を解決することにはならないと彼は主張した。 さらに新約聖書学に定着している他の傾向もヘンゲルによって否定された。何時までも信じられ支持されている非メシア的イエス像も現実には存在し得ないものと彼は見なし、トマス福音書も研究上過大評価されていると断じている。 ヘンゲルは福音書の成立時期を後に動かす見解を支持した。すなわち、マルコ福音書を69/70年、ルカ福音書75/80年、マタイ福音書を90/100年、ヨハネ福音書を100/105年ごろの成立と見なした。ヘンゲルは保守的な新約聖書学者の代表的な存在であるが、福音書成立の順序や時期に関しては、マタイ福音書が最初に書かれたとする初代教会の伝承には依拠していない。
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