新彗星の発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 09:24 UTC 版)
羽根田を新彗星の発見に導いたのは、愛犬のコロであった。コロはポインター系の雑種(メス)で、もともとは猟犬として飼われていた。コロは昼間繋がれていたが夜は放し飼いになっていたため、羽根田の部屋で過ごすことが多かった。コロは羽根田が天体観測に出かける際には必ずついてきた。そして、天体観測が終わるのをそばでじっと待つのが常であった。 1978年の夏は猛暑の上に日照り続きであったが、8月30日に雷混じりの激しい雨が降ってから天候が不順になった。9月1日も昼間に晴れ間があったものの日が落ちると曇りがちの空模様となったため、羽根田はその日の天体観測を諦めて自室で読書を始めた。しばらくして羽根田が何気なく立ち上がったのを見たコロは、観測小屋へ行くものと思ったようで起き上がって盛んに尻尾を振った。天候のせいもあって羽根田は気が進まなかったものの、コロとともに観測小屋へ出かけた。 羽根田は観測小屋を手動で回転させ、比較的雲のかかっていない夜空の方角に望遠鏡を向けた。最初は西の空、次いで北の空を探したが、いずれもすぐに雲におおわれてしまった。そこで南の空に目を向けると、天の川を中心とした一角が晴れていた。羽根田は彗星と一見して紛らわしい星団や星雲の多い天の川を避け、その東にあたるやぎ座付近に望遠鏡を向けた。 低空から次第に上空へと位置を変えつつ探索を続けていたところ、羽根田の視野をスーと光班が横切っていった。最初は星雲かと思って手元のランプを灯し、「全天恒星図」と照合してみると、やぎ座オメガ星の下方約2度半付近でけんびきょう座の領域であった。その位置には何の記号も見当たらなかったので、羽根田は「これは彗星かもしれない」と考えて位置のスケッチを取り、付近に見える10等級くらいまでの微光星の位置も書き込んだ。 この光班が彗星であれば当然移動するはずと思った羽根田は接眼レンズを60倍のものに差し替え、数分間待ってみたがあいにく雲がかかってきて確かめることができなかった。やむなく観測を打ち切って、羽根田は自宅に戻った。
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