新型エンジンと成長
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/26 03:54 UTC 版)
ライレーは1920年代から1930年代にかけて急速に成長する。パーシー・ライレーは1926年に新型車向けのエンジンとして、ハイカムシャフトのOHV方式だが、給排気弁それぞれに専用のカムを持つ独特のツインカムOHVエンジンを開発した。燃焼効率の良い半球型燃焼室(Hemispherical Combustion Chamber ヘミヘッド)とクロスフロー給排気などのDOHCエンジンに近い機能が実現された。 この時代のSOHC・DOHCエンジンにおいては、カムシャフトの駆動について重量・騒音のかさむシャフトないしギア、または耐久性にリスクを抱える長大なチェーンのいずれかを用いねばならなかった。ツインハイカムシャフトOHVはこのカムシャフト駆動問題を、当時既に一般的なレイアウトであったOHVの応用で回避したものである。外見はDOHCエンジンに類似した吸排気2列のヘッドカバーを持ち、その後1957年までのライレー車に共通して使われるレイアウトになった。 ツインカムOHVは1930年代にかけてのライレー車のほとんどに搭載され、同時代の競合車と比べ卓越した高性能をライレー車にもたらした。最初にこのタイプのエンジンを搭載して1926年に発売された1100cc車「ナイン」は、低いシャーシとあいまって操縦性のよい小型高性能車で、1930年代中期まで長く生産され、ライレーの名声を高めた。 ライレー・エンジンでは4気筒、6気筒、8気筒エンジン(――すべて、贅沢なツインカムOHV方式である)を生産、ミッドランドでは1ダース以上のバリエーションがある多様なボディを生産していた。誇張ではなく、この時点でライレーのボディバリエーションは、以下のごとく多数に上った。 サルーン: Adelphi, Deauville, Falcon, Kestrel, Mentone, Merlin, Monaco, Stelvio クーペ: Ascot, Lincock, Gamecock ツーリング: Alpine, Lynx スポーツ: Brooklands, Imp, MPH, Sprite リムジン: Edinburgh, Winchester 4気筒、6気筒の各モデルには顧客の好みで自在にボディを架装でき、保守的セダンからスポーティなレーシングボディまであらゆるものが揃っていた。上記の中でもサルーンボディの「ファルコン」「ケストレル」、スポーツ系の「ブルックランズ」「MPH」などは特に傑作と言えるレディメイドデザインである。 だが中規模のメーカーであるにも関わらずこのように際限なくモデル数を増やしたことは、熟練工の人件費が比較的安かった当時のイギリスでも賢明な販売策とは言えず、1936年頃にはモデル増大の一方で、それら多彩なボディ相互で共通の部品はほとんどないという状況になり、生産コストは過大となっていた。
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