数え上げ幾何学
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数学では数え上げ幾何学(enumerative geometry)は代数幾何学の一分野であり、主に交叉理論により、幾何学的な問題の解の数を数え上げることに関連している。
- ^ Schubert, H. (1979) [1879]. Kalkül der abzählenden Geometrie
- ^ Fulton, William (1984). “10.4”. Intersection Theory. ISBN 0-387-12176-5
- ^ * Candelas, Philip; de la Ossa, Xenia; Green, Paul; Parks, Linda (1991). “A pair of Calabi-Yau manifolds as an exactly soluble superconformal field theory”. Nuclear Physics B 359 (1): 21-74. doi:10.1016/0550-3213(91)90292-6.
- 1 数え上げ幾何学とは
- 2 数え上げ幾何学の概要
- 3 歴史
- 4 クレメンス予想
- 5 関連項目
数え上げ幾何学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 05:10 UTC 版)
「ミラー対称性 (弦理論)」の記事における「数え上げ幾何学」の解説
ミラー対称性の重要な数学への応用の多くは、数え上げ幾何学と呼ばれる数学の分野に属している。数え上げ幾何学では、典型的には代数幾何学を使い、幾何学的な問題の解の数を数え上げることに興味がある。数え上げ幾何学のもっとも早い時期の問題の一つに、ギリシャの数学者アポロニウスによる紀元前200年頃に提案された問題である。彼は、どのようにすれば与えられた3つの円に接する平面上の円はいくつあるかが分かるかと問うた。 一般に、アポロニウスの問題の解は、8つの円が存在する。右の図は黒で示した3つの与えられた円の例を示している。 数学の数え上げ問題はしばしば、多項式の値がゼロとなる点として定義されるいわゆる代数多様体という幾何学的対象のクラスに関係している。例えば、クレブシュ3次曲面(英語版)は左に図示してある4変数の3次多項式により定義される。19世紀の数学者アーサー・ケイリー(Arthur Cayley)とジョージ・サルモン(英語版)(George Salmon)の結果は、この曲面上にはちょうど 27 本の直線があるとのことであった。 この問題を一般化すると、上に述べたカラビ・ヤウ多様体であるクインティックスリーフォールド(5次多項式で記述される複素3次元多様体)の上に何本の直線を描くことができるかという問題となる。この問題は19世紀のドイツの数学者ヘルマン・シューベルト(英語版)(Hermann Schubert)により解かれ、彼はそのような直線はちょうど 2,875 本存在することを発見した。さらに、1986年に幾何学者、セルダン・カッツ(Sheldon Katz)が、クインティックスリーフォールドに完全に入っている(円のような)2次曲線の数は 609,250 個あることを証明した。 1991年頃には、数え上げ幾何学の古典的な問題の大半が解かれ、数え上げ幾何学への興味は下火になり始めていた。数学者マーク・グロス(英語版)(Mark Gross)によれば、「古い問題が解かれるとともに、人々はシューベルトの数を現代のテクニックを使いチェックするほうへ戻りはしたものの、非常に古めかしいものでした。」 しかしながら、この分野は1991年5月にふたたび活発化し始めた。そのとき物理学者であったフィリップ・キャンデラス(英語版)(Philip Candelas)、ゼニア・デ・ラ・オッサ(Xenia de la Ossa)、ポール・グリーン(Paul Green)とリンダ・パークス(Linda Parks)は、ミラー対称性をクインティックスリーフォールドに含まれる3次曲線の数を数えることに使うことができるかもしれないことを示した。大まかにいうと、カラビ・ヤウ多様体の内部に完全に含まれる球として、3次曲線を考えることができる。 キャンデラスと彼の協力者は、そのような6次元カラビ・ヤウ多様体は3次曲線をちょうど 317,206,375 個含むことができることを発見した。 クインティックスリーフォールド上の3次曲線を数えることに加えて、キャンデラスと彼の協力者は、数学者たちの得た結果をはるかに超える有理曲線の数え上げに関するより一般的な数多くの結果を得た。 この仕事で使われた方法は理論物理学からの数学的には厳密(en:mathematical rigor)ではないアイデアを基礎としていたが、数学者たちはミラー対称性予想のいくつかを数学的厳密に証明した。特に、ミラー対称性の数え上げ幾何学の予想は、現在では厳密に証明されている。
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