放出スペクトル分光法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/15 07:18 UTC 版)
「放出スペクトル」の記事における「放出スペクトル分光法」の解説
光は、様々な波長の電磁放射から成り立っている。そのため、原子やその化合物を炎やアーク放電で加熱すると、光の形でエネルギーを放出し始める。分光計を用いてこの光を分析すると、不連続なスペクトルが得られる。分光計は、光の波長ごとの成分を分離するために用いられる機械である。一連の線となって見られるスペクトルは、線スペクトルと呼ばれ、また原子に由来することから原子スペクトルとも呼ばれる。それぞれの元素は、異なった原子スペクトルを持つ。元素が決まった原子スペクトルを作ることは、原子が特定の定まった量のエネルギーを放射することを意味する。これより、電子は任意の量のエネルギーを持つことはできず、特定の定まった量のエネルギーを持つという結論が得られる。 放出スペクトルは、周期表上の元素によって異なるため、物体の組成を決定するのに用いることができる。1つの例は、地球に届く光を分析して恒星の組成を同定する天体分光学である。いくつかの元素は、熱することでその放出スペクトルを裸眼でも見ることができる。例えば、白金線を硝酸ストロンチウム溶液に浸して炎の中に入れると、ストロンチウム原子は赤い色の光を放出する。同様に、銅を炎の中に入れると、炎は緑色になる。このような明確な特徴により、元素の同定が可能である。ただし、全ての放出光が裸眼で見える訳ではなく、紫外線や赤外線が含まれる場合もある。 放出スペクトル分光法は、原子や分子が励起状態から低いエネルギー準位に遷移する際に放出される光子の波長を測定する分光法である。それぞれの元素は、その電子配置に従って特徴的な離散波長の光を放出し、それらを観測することで、サンプルの元素組成を同定することが出来る。放出スペクトル分光法は19世紀後半に発展し、これを理論的に説明しようとする試みは、量子力学の誕生に繋がった。 原子を励起状態にする方法には様々なものがある。蛍光分光法では電磁放射、粒子線励起X線分析では光子やその他の重粒子、エネルギー分散型X線分析や蛍光X線分析では、電子やX線光子と相互作用させる。最も単純な方法はサンプルを熱する方法で、サンプル中の原子同士の衝突により、励起状態になる。この方法は、アンデルス・オングストロームが1850年代に離散輝線を初めて観測した時に行った方法でもある。 輝線は、量子化されたエネルギー準位間の遷移から出てくるものであり、また当初は非常に鋭く見えるものの、有限な幅を持ち、即ち1つ以上の波長から構成される。この線幅広がりには、多くの原因がある。
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