指示語の体系とは? わかりやすく解説

指示語の体系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 05:59 UTC 版)

日本語」の記事における「指示語の体系」の解説

日本語では、ものを指示するために用い語彙は、一般にこそあど」と呼ばれる4系列をなしている。これらの指示語指示詞)は、主として名詞(「これ・ここ・こなた・こっち」など)であるため、概説書の類では名詞代名詞)の説明のなかで扱われている場合も多い。しかし、実際に副詞(「こう」など)・連体詞(「この」など)・形容動詞(「こんなだ」など)にまたがるため、ここでは語彙体系問題として論じる。 「こそあど」の体系は、伝統的には「近称中称遠称不定ふじょう、ふてい)称」の名で呼ばれた明治時代に、大槻文彦は以下のような表を示している。 \近称中称遠称不定称事物これ こ それ そ あれ あかれ か いづれ(どれ) なに 地位ここ そこ あしこ あそこかしこ いづこ(どこ) いづく 方向こなた そなた あなたかなた いづかた(どなた) こち そち あち いづち(どち) ここで、「近称」は最も近いもの、「中称」はやや離れたもの、「遠称」は遠いものを指すとされた。ところが、「そこ」などを「やや離れたもの」を指すと考えると、遠くにいる人に向かって「そこで待っていてくれ」と言うような場合説明しがたい。また、自分の腕のように近くにあるものを指して、人に「そこをさすってくださいと言うこと説明しがたいなどの欠点がある。佐久間鼎(かなえ)は、この点を改め、「こ」は「わ(=自分)のなわばり」に属するもの、「そ」は「な(=あなた)のなわばり」に属するもの、「あ」はそれ以外範囲属するものを指すとした。すなわち、体系下記のようにまとめられた。 \指示されるもの対話者の層所属事物の層話し手話し手自身ワタクシ ワタシ話し手所属のもの)コ系 相手話しかけの目標アナタ オマエ相手所属のもの)ソ系 はたの人 もの(第三者)(アノヒト) (はたのもの)ア系 不定ドナタ ダレ ド系 このように整理すれば、上述の「そこで待っていてくれ」「そこをさすってくださいのような言い方はうまく説明される相手側に属するものは、遠近問わず「そ」で表されることになる。この説明方法は、現在の学校教育国語でも取り入れられている。 とはいえすべての場合佐久間説で割り切れるわけでもない。たとえば、道で「どちらに行かれますか」と問われて、「ちょっとそこまで」と答えたとき、これは「それほど遠くないところまで行く」という意味であるから大槻文彦のいう「中称」の説明のほうがふさわしい。ものを無くしたとき、「ちょっとそのへん探してみるよ」と言うときも同様である。 また、目の前にあるものを直接指示する場合現場指示)と、文章の中で前に出た語句指示する場合文脈指示)とでも、事情変わってくる。「生か死か、それが問題だ」の「それ」は、「中称」(やや離れたもの)とも、「相手所属のもの」とも解釈しがたい。直前内容を「それ」で示すものであるこのように指示語の意味体系は、詳細に見れば、なお研究余地多く残されている。 なお、指示体系言語によって異なる。不定称除いた場合、3系列をなす言語日本語(こ、そ、あ)や朝鮮語(이、그、저)などがある。一方、英語(this、that)や中国語(这、那)などは2系列をなす。日本人英語学習者が「これ、それ、あれ」に「this、it、that」を当てはめて考えことがあるが、「it」は文脈指示代名詞系列異なるため、混用することはできない

※この「指示語の体系」の解説は、「日本語」の解説の一部です。
「指示語の体系」を含む「日本語」の記事については、「日本語」の概要を参照ください。

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