技術的な解決策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:56 UTC 版)
人新世の将来に対するアプローチとして、ジオエンジニアリングなどの技術による環境問題の解決という案がある。大きく分けて、太陽光を反射して気候を冷却する太陽放射管理(英語版)(SRM)と、二酸化炭素の吸収などによるCO2除去(英語版)(CDR)の2つの方法がある。ジオエンジニアリングは、急激な気候変動を起こす危険性や軍事利用の懸念からタブー視されていた。その流れを変えたのは、クルッツェンが2006年に発表した論文だった。クルッツェンは冷却効果をもつ硫酸エアロゾルを成層圏に散布する方法を発表し、ジオエンジニアリングの必要性を論じた。パリ協定の枠組みでは21世紀中の気温上昇を2度未満に抑える目標には到達しないことが判明しているため、ジオエンジニアリングによる解決が注目されている。 ジオエンジニアリングはいくつかの問題点も指摘されている。(1) 太陽放射管理を止めた場合、温室効果が急激に進む。(2) 太陽放射管理は二酸化炭素濃度を減らさないため海洋酸性化は止まらない。(3) 太陽放射管理によって全球で水循環が減る可能性がある。(4) 生態系を利用するCO2除去は生態系への悪影響の可能性がある。(5) 素朴な人間中心主義や技術楽観主義である。(6) 人新世の社会的起源に対する視点がなく、産業革命以降の構造的な格差を温存する可能性がある。(7) 地域紛争をまねく可能性がある。たとえば人工降雨を一方的に導入すると、大気中の水分をめぐって「雨を盗んだ」などの非難が起こりうる。 環境保護活動を表面的に告知するが実質は貢献していないものはグリーンウォッシングとも呼ばれており、企業活動に多い。2010年の調査では、グリーンウォッシングが環境改善の最大の阻害要因となっているという結果もある。
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