人新世の社会的起源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:56 UTC 版)
人新世が人類の活動を原因(人為起源)とするならば、それは社会活動の帰結でもあり、社会起源ともいえる。自然科学に重点を置いた人新世の議論は、この世界を形作った資本主義、帝国主義、人種主義などの体系的不平等が考慮されていないという指摘がある。この観点からは人新世は政治・経済的な起源も重要とされる。 地域や生活によってエネルギー消費の不平等が存在し、全ての人間が同じように環境に影響を与えているわけではない。たとえば牧畜生活と都市生活ではエネルギー消費の差が1000倍ともいわれ、2016年時点で世界人口の13%にあたる9億4000万人が電気を利用できない状態である。2019年時点で最も温室効果ガスの排出が多い上位10%の所得層は排出量の50%を占めており、最も温室効果ガスの排出が少ない50%の所得層は排出量の10%にとどまっている。このため富裕国と富裕層により大きな責任があるという指摘がある。 人新世によって全人類が被害をこうむるという表現がなされることがあるが、そうした表現が災害における不平等を隠すという批判がある。2005年のハリケーン・カトリーナにおけるニューオーリンズの黒人社会と白人社会の違い、2011年のタイの洪水における地方政府と中央政府の対立、海面上昇におけるキリバスやバングラデシュとオランダの違いなどが一例である。地域や所得によって気候変動への対策に投入できる費用が異なり、不平等が生じる。こうした状況は「富裕者と特権階級の救命ボート」とも表現される。
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