手相
『異苑』35「手相」 晋の名将・陶侃の左掌には縦に長い筋があって中指まで通り、いちばん上の関節の所で切れていた。易者は「筋が指先までつきぬけていたら、どこまでも出世なさったでしょう」と言う。陶侃は筋を上までつなげようと、針で指をつつく。すると血がはねて壁にかかり、「公」の字の形になった。陶侃は皇帝になる望みを持っていたが、公爵で終わることが示されたのである。
*掌の筋が文字に見える→〔掌〕2bの『史記』「晋世家」第9。
『けんかえれじい』(鈴木清順) 昭和10年(1935)頃。岡山の中学生・麒六(きろく)は下宿先の娘・道子を恋していたが、事情があって(*→〔旅立ち〕)、会津の中学校へ転校した。雪の日、麒六はカフェの女給から「あんた、好きな娘がいるね。掌(て)を見せてごらん」と言われる。しかし女給は手相を見ても「大事にしてやるんだね」としか言わない。帰ると、道子が岡山から訪ねて来ていた。彼女は「私は身体に欠陥があって結婚できない。修道院へ入ります」と言って、麒六に別れを告げた。
『誰がために鐘は鳴る』(ヘミングウェイ)第2章 鉄橋爆破の任務を帯びたロバート・ジョーダン(*→〔橋〕7)の手相を、ジプシー出身の女ピラールが見る。しかし何も言わない。ロバートが「何と出ている?」と聞くと、ピラールは「何も出ていない」と答える。ロバートは「何か出ていたはずだ。気にしないから、教えてくれ」と言うが、ピラールは「何も出ていない」と、重ねて否定する〔*爆破は成功するがロバートは重傷を負い、死を目前にするところで物語は終わる〕。
★3.手相で過去を知る。
『愛人ジュリエット』(カルネ) 「忘却の国」の人々は記憶を持たず、自分自身の過去を知らない。いつわりの過去を述べて見栄をはることもある。手相を見る男が、「過去を見てあげよう」と呼びかける。女連れの兵士が来て、「戦友がいた。女たちとも踊った」と言う。男は「手相には出ていない。見えるのは、大きな苦しみだけだ」と告げる。兵士は不機嫌になり、慰める女に「うるさいな」と言って、去る。
『花咲ける騎士道』(ジャック) 18世紀フランス。美女アドリーヌが青年ファンファンの手相を見て、「軍隊に入れば出世して、王女の婿になる」と予言する。ファンファンは喜んで入隊するが、実はアドリーヌは徴兵官の娘で、でたらめを言っては男たちを軍隊へ送り込んでいた。ところが偶然のことから、ファンファンは敵の司令官を捕らえる大手柄をたて、国王ルイ15世が彼を大尉に任じ、王女を与える。その王女とは、ルイ15世に気に入られて養女になったアドリーヌだった。こうして、アドリーヌのでたらめが実現してしまった。
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