戦時国際法における位置づけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 20:28 UTC 版)
赤十字国際委員会は、戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約についての1958年のコメンタリーにおいて「敵国の手の内にあるあらゆる者は、国際法に基づき一定の待遇を与えられなければならない。その者とは、第三条約で扱った戦争捕虜、第四条で扱った文民、または第一条約で扱った軍隊内の医療関係者が含まれる。中間に位置する資格は存在しない。敵国の手の内にある何人たりとも法の外に置かれることはあり得ない。我々は、これが満足いく解決法であると感じている。単なる気分的なものにとどまらず、何より、人道主義的な観点から満足できるものである。」と述べている。赤十字国際委員会は「もし文民が敵対行為に直接関与したならば、彼らは『不法な』あるいは『権利の無い』戦闘員あるいは交戦者と見なされる(なお人道の法に関する条約がこれに含まれているか否かは明確に示されていない)。彼らはその行動について、留置された国における国内法で裁かれる可能性がある。」とする見解を示している。 1977年のジュネーヴ諸条約第一追加議定書第五十条は、文民について次のように定めている。 1. 文民とは、第三条約第四条A(1)、(2)、(3)および(6)と、この議定書の第四十三条で規定された分類に含まれない者を指す。 2. 文民たる住民(civilian population)は、すべての文民である者から構成される。 3. 文民たる住民の中における文民の定義に合致しない諸個人の存在は、その住民から文民たる資格を奪うものではない。 この定義は、一定の分類に属さない者、という消極的な定義になっている。第三条約第四条4A(1)、(2)、(3)、第一議定書第四十三条で定められている者は、戦闘員である。そのため、議定書のコメンタリーでは、武装組織に属さず敵対行為を行わない者が文民である、という解説が加えられている。文民は、武力紛争に関与することができないかわりに、ジュネーヴ諸条約および議定書の保護下に置かれる。第五十一条では、文民たる住民や個々の文民に対する保護が与えられなければならないことが述べられている 第一追加議定書第三章では、文民に属するものを攻撃対象とすることを規制している。1998年の国際刑事裁判所ローマ規程の第八条8(2)(b)(i)でも、「そのような文民たる住民、あるいは敵対行為に加わっていない個々の文民に対する意図的な攻撃」が戦争犯罪にあたると定めている。すべての国家が第一追加議定書やローマ規程を批准しているわけではないが、文民に対する直接的な攻撃が戦争慣習法の違反に当たり、この点であらゆる交戦団体は規制を受ける、という認識は一般に国際人道法の原則として受け入れられている。
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