成年後見人の権限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 02:18 UTC 版)
成年後見人の権限として認められる例は、預貯金の解約や株式の売却、遺産分割協議や相続の手続き、病院・介護施設への入院・入所契約である。条件付きながら、介護施設に入所するための自宅の売却、自宅の建て替え、財産から一定の報酬を得ることも認められる。しかし遺言や子供の認知、日用品の購入を取り消して返品することは認められない。また、成年被後見人にあてた郵便物等を成年後見人に転送することは、郵便局へ提出する転居届(郵便法第35条)で行う場合、成年後見人と成年被後見人が同居している事実を郵便局が確認できない場合は認められない。成年後見人が後見事務を行うために郵便物等の転送をさせる場合は、家庭裁判所に「成年被後見人に宛てた郵便物等の配達(転送)の嘱託の審判」(以下「転送嘱託の審判」)を申し立て、家庭裁判所により転送嘱託の審判が確定した後、家庭裁判所から日本郵便等にその旨の通知がされ、6ヶ月を超えない期間で転送がおこなわれる(家事事件手続法第122条第2項)。ただし、郵便物等に該当するものは、郵便法上の「郵便物」又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第3項に規定する「信書便物」のことを指す(民法第860条の2第1項)ため「ゆうパック」等は「郵便物」に該当しないことから、転送の対象に含まれない。認められるケースに関しては、いずれも本人のためにする必要があり、成年後見人自身や本人の家族のためにするのは後見人の義務に反するということを理解すべきである。条件付きで認められるケースに関しては、被後見人は自分の意思を表明しにくく、弱い立場にあることに留意しなければならない。取り分け生活拠点である自宅の処分は慎重さが求められる。認められないケースに関しては、例えば日用品まで介入するのは、本人の意思を不当に束縛するためであり、意思を尊重することと判断力の限界を推し量ることのバランスが課題となる。本人の預貯金を解約して株式に投資することに関しては、財産管理の一環として成年後見人に法的権限があることは否定できないが、2017年3月時点では「株式投資は元本が保証されないので、実際に投資した例は聞かない」と司法書士の大貫正男は話している。
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