惑星の軌道の移動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 02:28 UTC 版)
「太陽系の形成と進化」の記事における「惑星の軌道の移動」の解説
星雲説では、巨大氷惑星(天王星型惑星)とも呼ばれる外側にある2つの惑星の位置は説明ができない。天王星と海王星はガスや宇宙塵の少ない領域にあり、軌道周期も形成には長すぎる。そのためこの2つの惑星は、物質がより豊富に存在していた木星や土星の近傍で形成され、数億年かけて現在の位置に移動(惑星移動)したと考えられている。 外部惑星が形成後に移動したと考えることは、太陽系の最外縁領域の存在と性質を説明する上でも不可欠である。海王星以遠の太陽系外縁部にあるエッジワース・カイパーベルト、散乱円盤、オールトの雲等は氷で出来た小天体がまばらに存在する領域で、多くの彗星の発生源と考えられている。これらの太陽から遠い場所では原始太陽系星雲が散逸する前に惑星を形成するには凝集が遅すぎ、また宇宙塵の円盤も惑星を形成するには質量密度が十分ではなかった。エッジワース・カイパーベルトは太陽から30天文単位から55天文単位付近に存在し、散乱円盤は太陽から約100天文単位以遠にまで達し、オールトの雲は約5万天文単位あたりから始まっている。しかし元々、エッジワース・カイパーベルトは今よりも密度が濃くまた太陽に近く、外縁は太陽から約30天文単位、内縁は形成されたばかりで今よりやや太陽に近かった頃の天王星や海王星の軌道(15から20天文単位で、現在とは逆に海王星より天王星の方が太陽から遠かった)のすぐ外側にあったと考えられている。 太陽系の形成後、巨大惑星の軌道は、それぞれお互いの重力の影響を受けながら、残っていた多数の微惑星と共にすこしずつ移動してきた。5億年から6億年経つと、木星と土星は2:1共鳴の軌道に落ち着き、この共鳴により外側の天体がさらに外側に押し出された。海王星は天王星を追い越して原始カイパーベルトに入り込んだ。それらの惑星は外側に向かって移動する間に、氷で出来た小天体の大部分を内側へ散乱させた。散乱させられた微惑星は次の惑星に出会うと、同じように内側へ移動する間に惑星の軌道を外側へ動かした。このプロセスは微惑星が木星と相互作用して、その重力によって離心率の高い楕円軌道に移るか太陽系から完全に放り出されるまで続いた。これによって木星はわずかに内側へ移動した。これらの木星によって楕円軌道に散乱させられた天体がオールトの雲を形成した。海王星の移動による散乱の度合が低かった天体が現在のエッジワース・カイパーベルトや散乱円盤を形成した。このシナリオはエッジワース・カイパーベルトや散乱円盤の現在の質量の少なさを説明する。冥王星を含む一部の散乱させられた天体は、海王星の軌道と重力的に結びつき、平均運動共鳴の状態になる。最終的に、微惑星円盤の摩擦が天王星と海王星の軌道を再び円形にした。 木星型惑星とは対称的に、地球型惑星の軌道はジャイアント・インパクト期以降は安定しており、太陽系が寿命に達するまで大幅に移動することはないと考えられている。
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