惑星の理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 04:08 UTC 版)
「エカント」および「アルマゲスト」も参照 プトレマイオス『アルマゲスト』によれば、紀元前3世紀の終わり頃の小アジアのペルガ出身の数学者アポロニウスは、既に従円と周転円を惑星の順行・逆行の説明に用いていた。先行するエウドクソスの同心球説に比較すると、数値的な分析にも向いており、火星などの明るさの変化を距離の変化として説明することができるといった長所があった。 惑星の理論を作るにあたって、プトレマイオスは、惑星の運動に太陽との相対的な位置で決まる成分があることを指摘して(『アルマゲスト』IX.5)、太陽と関係なく決まる成分と分離し、片方を従円(導円)に、残りの片方を周転円に割り振った。現代から見れば、惑星の公転と地球の公転への分離に近いことをしていたことになる。上図において、惑星(黄色)は周転円(小さい円)に沿って等速回転し、周転円の中心は、従円(大きい円)に沿って動く。回転方向は、いずれも反時計回りである。 逆行と順行の境目で惑星が一瞬停止する留は、古代メソポタミアでも大きな関心が寄せられ、観測や理論的な考察の対象になったが、留の前後でも惑星の動きは非常にゆっくりであるため、精確な決定は難しかった。プトレマイオス『アルマゲスト』XIIでは、アポロニウスの留が起る点を幾何学的に求める理論が紹介され、続いて各々の外惑星に当てはめている。 実際には惑星はケプラーの法則に従って楕円運動し、等速円運動ではない。両者の差を埋めるために、『アルマゲスト』では従円に離心円、すなわち地球を中心としない円を用い、また回転速度をエカントを用いて調節した。上図のxが従円の中心であるが、地球(青い点)はややずれたところにあり、回転速度はエカント(黄色い点)から見て等速に見えるように調整されている。 従円も周天円も、黄道とほぼ平行にされていた。これは、惑星が黄道に近いエリア(獣帯)でのみ運動していることを説明している。ただし、獣帯の中での黄緯の変化を説明するため、従円や周天円は黄道に対してやや傾いており、その傾きは変化するとされたり(『アルマゲスト』)、一定の値で固定(プトレマイオス『惑星仮説』、アーリヤバタ『アーリヤバティーヤ』など)されたりした。
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