エカントと惑星理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 01:22 UTC 版)
方角も距離も良く近似にするためには、回転速度の中心を離心円の中心と異なった点におく。すなわち、離心円の回転速度を、中心とは異なったエカントと名づけられた点から見て一定になるように調整する。ケプラーの法則に則った運動を近似するには、離心円の中心を楕円の中心に一致させ、エカントを楕円の(天体がない方の)焦点と一致させる。すると、軌道離心率が小さい場合、方角、距離の変動ともによい近似を与える。 エカントは、惑星の理論で用いられた。 惑星の理論を作るにあたって、プトレマイオスは、惑星の運動に太陽との相対的な位置で決まる成分があることを指摘して(『アルマゲスト』IX巻5)、太陽と関係なく決まる成分と分離した。現代から見れば、前者は地球の公転、後者は惑星の公転に相当する。そして、各々に円を一つずつ割り振った。右図において、惑星(黄色)は周転円(小さい円)に沿って等速回転し、周転円の中心は、従円(大きい円)に沿って動く。従円は図のxを中心とする離心円で、xがエカントである。 現代から見れば、『アルマゲスト』の理論では、地球の公転又は惑星の公転のうち、片方を等速円運動による粗く近似して周転円とし、もう片方を離心円とエカントを用いてより詳しく近似して従円にしている。なお、離心円にエカントの導入した理由は、上述したように、周転円の中心と地球との距離をより精度よく近似するためであった。両者の距離は、周転円の見かけの大きさとして観測に影響する。
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