平均運動共鳴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/03 21:27 UTC 版)
平均運動共鳴(へいきんうんどうきょうめい、mean motion resonance)とは、中心天体の周りを公転する2つの天体の公転周期の比が1:2や2:3など簡単な整数比(尽数関係、commensurability)となっている状態のこと。ここでいう「平均運動」(mean motion) とは、中心天体の重力を受けて楕円軌道を描く天体の、一周期で平均した公転角速度のことである。 平均運動共鳴の結果、軌道が安定化することも不安定化することもある。共鳴の結果、2つの天体が近接遭遇を起こさないような配置となった場合は軌道が安定化する。例として以下のようなケースがある。 冥王星や冥王星族天体はより質量の大きな海王星の軌道と交差しているにもかかわらず、安定な軌道を持っている。これはこれらの天体と海王星の公転周期が 3:2 の共鳴状態にあり、海王星から常に離れた位置にあるためである。海王星と交差するが海王星との共鳴軌道を持たない数多くの他の天体は、トリトンのように海王星の衛星となってしまうか、海王星から強い擾乱を受けてこの領域から弾き出されてしまう。 木星と2:3、3:4、1:1の平均運動共鳴の位置にある小惑星は安定した軌道を持っており、それぞれヒルダ群、チューレ群、トロヤ群と呼ばれている。2015年に発見された(514107)カエパオカアウェラは1:-1、つまり木星とほぼ同じ軌道を逆行することで、軌道が安定している初の事例である。 小さな天体の場合は共鳴によって軌道が不安定化する場合の方が多い。例として以下のようなケースがある。 小惑星のメインベルトにはカークウッドの空隙と呼ばれる小惑星のほとんど存在しない領域が存在する。この領域は木星との平均運動共鳴が起こる位置に相当している。この領域にある小惑星は木星からの摂動を繰り返し受けて領域外へ弾き飛ばされる。 3個またはそれ以上の天体の公転周期が互いに簡単な整数比になっている場合の共鳴をラプラス共鳴 (Laplace resonance) と呼ぶ。例えば、木星の衛星ガニメデ・エウロパ・イオの三つは互いに 1:2:4 の軌道共鳴の状態にある。
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