平均飛行速度の最大化理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 03:20 UTC 版)
クロス・カントリー競技で、飛行速度を数学的に最適化する理論を発展させたのは、ソアリングの開拓者のポール・マクレディー(Paul MacCready)の功績とされている。 この方法は1938年にウォルフガング・シュペーテ(Wolfgang Späte)が発表したものである。シュペーテは、後年、第二次世界大戦時のドイツ空軍で、ロケット戦闘機メッサーシュミット Me163を操縦している。 この飛行速度理論は、サーマルの強さ、グライダーの性能ほかの変数から、サーマルとサーマルの間を渡るときの最適飛行速度を算出することが出来る。グライダーを速く飛ばすと、次のサーマルに短時間で到着できる。他方、高速で飛行するほど沈下高度が増え、失った高度を回復するためにサーマル内で旋回飛行を行う時間は長くなる。マクレディーの飛行速度理論は、サーマルの間を渡る飛行と、高度を回復するためのサーマル内の飛行の兼ね合いを計算するものである。競技に出場するパイロットたちは、機載のコンピューターにマクレディー理論のプログラムを入れておき、最適飛行速度を求めている。 このような理論を使うとしても、平均速度を向上させる決め手は、パイロットが強力なサーマルを見つけ出す能力である。 強力なサーマルの存在が予測されている空域のクロス・カントリー飛行では、バラストの水を主翼内と垂直尾翼内のタンクまたは袋に搭載する。主翼のバラスト搭載位置は主桁の前で、重心位置を前進させるので、それを補正するために後方にある垂直尾翼にも搭載する。 バラストを積むと翼面荷重が増え、最大揚抗比になる速度が大きくなるので、サーマル間を渡る時間は短縮される。その反面、上昇気流内の上昇速度は低下し、旋回半径が大きくなってサーマル内に収まりにくくなる。 サーマルやウエーブなどの上昇気流が強力である場合は、バラスト搭載による上昇気流内の性能低下の影響が小さくなるので、敢えてグライダーを重くして、平均速度や一定時間の飛行距離を数%向上させる。上昇気流が予想より弱かった場合、場外着陸を行う場合は、パイロットは排出バルブを開いてバラストの水を機外に捨てる。
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