後世への継承と論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/06 14:43 UTC 版)
デカルトの渦動説には、物体の運動というのは直接に接触して押さなければ変化するはずがない、とする考えが含まれている。これはアリストテレスの運動論を受け継いだ考え方であり、これは後に「近接作用説」と呼ばれるようになった。 デカルトの『哲学原理』は版を重ね、多くの人々に読まれ、この渦動説も当時や後世の哲学者、自然科学者たちに影響を与えた。ホイヘンスやライプニッツらは、渦動説を改良しつつ引き継ぐ形で近接作用を用いて運動を説明した。 だが、アイザック・ニュートンは若いころにデカルトの書を読んで渦動説を知ったが、この説には同意しかねたらしい。ニュートンの遺品として残された書類の中には「重力および流体の平衡について」という書きかけの手稿もあり、これは『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』の刊行よりかなり前に書かれたもので死後も刊行されることはなかったが、その手稿にはデカルトの渦動説を名指しで批判する文章が書かれている。 ニュートンは『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア、1687年)において万有引力という概念を提唱したが、こちらのほうは「離れた物体が影響を及ぼす」とする説であった。つまり遠隔作用説を唱えたことになる。近接作用で説明する学説と遠隔作用で説明する学説が、西洋の学会で同時に立てられている状態になり、激しい論争が巻き起こった。ライプニッツやホイヘンスはヨーロッパ大陸において唱え、それに対してニュートンはイングランドで唱える形になった。双方とも譲らず、論戦は実に18世紀半ばまで続いた。この時代のフランス人で、イギリスにも滞在したことのあるヴォルテールが『哲学書簡』(1734年)で「ドーバー海峡をひとつ越えると、世界がまったく違う原理で説明され、宇宙が異なっている」とあきれ果てたように書いた文章が残されている。
※この「後世への継承と論争」の解説は、「渦動説」の解説の一部です。
「後世への継承と論争」を含む「渦動説」の記事については、「渦動説」の概要を参照ください。
- 後世への継承と論争のページへのリンク