形状設計法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 03:27 UTC 版)
プロペラはプロペラ自身の回転運動による速度と機体が前進する速度が合成された流れの中で推進力を得るために複雑な3次元形状となる。歴史的に人力飛行機の性能向上はプロペラの優れた形状設計法の出現が大きな要因とされる。よく用いられる設計法としてはマサチューセッツ工科大学のイゲン・ララビー(Eugene E Larrabee)が提唱したララビー(Larrabee)法とアドキンスとリーベック(Adkins & Liebeck)の方法がある。 ララビー法は誘導エネルギー最小化によりプロペラ効率向上を狙ったものである。誘導エネルギーを最小とするベッツ(Betz)の条件に基づいており、与えられた設計パラメータについてプラントル(Prandtl)やゴールドシュタイン(Goldstein)が解いたベッツの条件を満たす循環分布を実現するプロペラ形状を求める方法である。MITでクリサリスの開発に関わっていたララビーはマクレディの要請によりゴッサマー・アルバトロスのプロペラを設計した。イギリス海峡横断を成功させた要因の一つがこの高効率のプロペラである。ララビーによる高効率なプロペラはパイロットの消耗を抑えることに成功し、試験においては滞空時間を18分から69分へと向上させた。また、この69分の飛行は体力の限界ではなく、パイロット交代のため着陸予定地点に到着したためであった。ララビー法はMITのドレラによって製作されたソフトウェアXROTORで用いられ、モナークシリーズやダイダロスのプロペラ設計に使用された。アドキンスとリーベックの方法はララビー法の派生型であるが、基本的な考え方はララビー法同じである。アドキンスとリーベックの方法は航空宇宙技術研究所(NAL:現在の宇宙航空研究開発機構/JAXAの前身の一つ)の論文 でBASICによる実装が公開されており、人力飛行機のプロペラ設計法として広く利用されている。前述の通り、ララビー法とアドキンスとリーベックの方法はいずれも必要な推力に対して誘導エネルギー損失を最小化する設計法であり、人力飛行機のような低レイノルズ数領域で影響が大きくなる形状抗力による損失を考慮していないという欠点を持つ。 また、プロペラ後流上の渦により生じるプロペラブレードの各断面の誘導速度を考慮して、各断面上の空力性能を計算する渦法と呼ばれる計算法があり、近年ではこの渦法と非線形最適化手法を用いたJAXAの原田正志が提唱する低レイノルズ数領域向けのプロペラ設計法 や、3次元境界要素法によるプロペラ設計 も提案、実践されている。
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