序論的部分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/08 08:48 UTC 版)
比較的小さないくつかの章に分けて『源氏物語』の作者、本文、注釈などについての考察を行っている。この部分は安藤為章の『紫家七論』による部分が多いが、宣長独自の考察も多く含まれている。 作者の事藤原道長や紫式部の父(藤原為時)が書き加えたなどという古注にしばしば見える異説を批判し、『源氏物語』は全て紫式部が作ったものであることは間違いないとしている。 雲隠巻などというものは理由があって巻名だけがあって名前が無いものであるがそれは理由があってのことである。今伝えられている雲隠とは後の人の作ったものである。 宇治十帖が紫式部の作でないなどという説があるがそのようなことはなく、全て紫式部の作である。 述作由来の事当時『源氏物語』の成立事情を説明するものとして主流であった『源氏物語のおこり』を否定している。 述作時代の事『河海抄』の記述を引いて寛弘のころに書かれ康和のころに広まったとしている。 作者系譜の事作者紫式部の父方・母方(藤原為信)・夫(藤原宣孝)の系譜について触れ、いずれもが藤原氏の北家につながることを述べている。 紫式部と称する事清少納言や和泉式部といった当時の女流作家の例を引いて紫式部を含めたこれらの名前は本名ではなく父・兄・夫の官職などに基づく「女房名」であるとしているが、「紫」の文字を含むことが女房名としても特異なものであることにも触れている。 準拠の事古くから準拠ということがさまざまにいわれてきたがあまり意味はないことであるとしている。 題号の事古くからの注釈書で『光源氏物語』と呼ぶことについて述べている。 雑々の事『源氏物語』60巻説のことについて、取り上げるに値しない説であるとしている。 並びの巻のことについて、古くからさまざまな説が言われているが、本来の『源氏物語』とは何の係わりも無いことである。ただしこのことは古くからいろいろといわれているのでそのようなことがいわれていたことさえ一通り心得ておけばそれでよい。 系図と年立のことについて、『源氏物語』を正しく理解するためには必要なことであるとしている。「『年紀考』を見よ」といった記述のあることからこのときすでに『源氏物語年紀考』ができあがっていたと考えられる。 本文のことについて、源氏物語の本文には青表紙本と河内本があるとされるが、河内本は見たことが無いとしている。 注釈の事『河海抄』が註釈の第一であり、『河海抄』と『花鳥余情』があればたいていのことは用が足りる。そのほかに『弄花抄』、『細流抄』、『孟津抄』、『明星抄』、『岷江入楚』、『源氏物語抄』(『紹巴抄』)といった数多くの注釈書の名前を挙げているがほとんど同じことを述べており、その違いはわずかなものであるとしている。『湖月抄』は全ての本文と主要な説を載せているため大変便利なものである。著者の身分が地下の人であり低いことを理由に『湖月抄』の価値を低く見る意見があることを批判している。注釈書にはそのほかさまざまな「秘説」なるものがあるがとるに足らないものである。
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