幸福との関連
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 10:09 UTC 版)
21世紀初頭の大掛かりな調査では、より感謝する人ほど高レベルの主観的幸福感 (Subjective well-being) を抱くことが示唆されている。感謝を表す人のほうがより幸せで、落ち込む事やストレスが少なく、自分の生活や社会関係により満足しているのである。特に抑鬱に関しては、感謝がポジティブな経験の記憶と回想力を高めることにより気分の落ち込みを和らげる緩衝材の役割を果たしている。感謝する人はまた自身の環境制御、自己啓発、人生の目的、自己受容、を高いレベルで保っている。感謝する人は人生で経験する困難に対処するより積極的な方法を持っており、他人からの支援を求めたり、経験を糧に再解釈して成長したり、問題にどう対処するかを計画することに多くの時間を費やす傾向が高いとされている。また感謝する人にはネガティブな対処戦略が少なく、問題を避けようとしたり問題があることを否定したり、自分自身を責めたり薬物を使って現実逃避するといった傾向は低い。感謝する人は睡眠も良好で、これは彼らが就寝直前にネガティブ思考ではなくより前向きな思考をするためだと考えられている。数多くの研究が、感謝する人は幸福レベルがより高くストレスや抑鬱のレベルが低いことを示唆している。加えて、人の感謝はパートナーとの関係満足度を維持することもできる。 多くの感情と人格特性は幸福や精神衛生にとって重要であるが、とりわけ感謝が唯一無二なほど重要かもしれないとの証拠がある。第一に、より感謝する人ほど人生の転機にうまく対処していたことが長期にわたる研究で示された。具体的には、転機を前に感謝していた人達ほどその3か月後にストレスや抑鬱が少なく、現状の関係に満足していた。第二に、感謝には幸福と唯一無二な関係があり、他の人格特性では説明しえない幸福の側面を説明できることを近年の2つの研究が示唆している。どちらの研究でも、ビッグファイブ (心理学)や最も一般的に研究される30種の人格特性よりも感謝の心が幸福を説明できうることが示された。 感謝は身体的健康をも増進させることが示されている。例えば、ある研究では、1か月以上にわたってティーンエイジャーが他の人に感謝の手紙を書いた場合、彼らはより健康的な食材を食べる傾向が強まった。ほぼ間違いなく、人々は感謝を感じると、相手の施しに報いようとする義務を感じる。そのため、自分の健康を気ままに損ねてしまう(つまり他人が自分に投じてくれた施しを無下にするような行動)よりも、健康的な生活を送らなければ駄目だという気持ちに駆られていく可能性があるという。あるいは、感謝にはポジティブな感情を引き出す傾向があり、これらポジティブな感情には将来の好ましい可能性へと注意を向けさせる傾向がある。すると各個人は、健康的な食事など、こうした未来に役立つ行動に従事する傾向が強くなるという。
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