平成の大合併に伴う問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 16:25 UTC 版)
自治体が合併する場合、合併協議会で取りまとめられる協定書に「慣行の取扱い」の項目を設けて市町村章や木・花・鳥などのシンボルに関する取り決めに付随する形で合併後の自治体歌の取り扱いについて記載されることが多い。 平成の大合併で編入合併方式を採用した自治体の場合、大半は編入元の市歌がそのまま継承されたが浜松市や鳥取市、新潟県上越市のように合併協議会の申し合わせを受けて既存の市歌廃止・新市歌制定が行われた事例もある。編入元の市歌に統一する場合は、秋田市のように町村部の歌を「地域の歌」として存続させる旨の申し合わせが協定項目に含まれる事例がみられる。 新設合併の場合、名称は合併に参加する旧自治体を引き継いでいても地方自治法上は別個の自治体となるため、旧自治体の市町村歌は合併協議会で存続を取り決めた場合を除き原則的に失効したものとして扱われる。新設合併に伴う旧市歌の失効から早期に新市歌を制定した事例には前述の静岡市の他、青森市や松江市などがある。しかし、市町村章が合併前後に最優先で決定されるのに対して市町村歌は優先順位が低く、取り決めに含まれないまま旧自治体が制定していた楽曲の地位が不明確な状態に置かれることも少なくない。例えば、山口県では平成の大合併に際して新設合併方式を採った下関市・岩国市・光市・長門市の4市で合併協定書に新市歌制定を取り決める項目が明記されたにも関わらず合併から10年前後を経過しても取り決めが履行されたのは岩国市のみとなっており、美祢市では旧自治体の市歌の扱いに関する取り決めが協定書に無いため合併後の同名旧市の市歌の扱いが不明確な状態となっている。なお、新設合併に際して同名旧市の市歌を継承した自治体には秋田県男鹿市、埼玉県秩父市、千葉県鴨川市、新潟県三条市、長野県伊那市および佐久市、兵庫県西脇市、和歌山県橋本市および新宮市などがある。これらの自治体では合併協定書に「旧市の市歌継承」を明記するか、新設合併後に市歌の扱いを検討した結果として継承(新市の告示による再制定)が選択された。 同名旧市が存在しない全くの新市の場合は協定書に「新市において調整する」等の申し合わせが含まれるのが通例であるが、合併から10年以上を経過しても財政上の問題や制定後の普及に対する懸念を理由として合意内容が履行されないまま放置されることも珍しくない。 合併で既存の自治体歌が失効した場合に特有の問題として、作詞・作曲者が著名な人物である場合の著作の亡失が挙げられている。浜松市の場合、横浜市と並んで森鷗外が作詞したことで有名だった旧市歌の廃止決定に対して旧市域の住民を中心に批判が存在した。
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