常時利用するもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/16 16:15 UTC 版)
砂浜の波打ち際は、砂が常にかき乱され、生活するには難しい場と思えるが、ちゃんと生活に利用するものがある。スナホリガニ、ヒメスナホリムシなどの甲殻類は、遊泳力が強く、素早く砂に潜る能力がある。彼らはそれを利用して、常に波打ち際に暮らし、波がくると泳ぎだし、素早く砂に潜って運び去られるのを避ける。また、二枚貝のフジノハナガイも、波がくると素早く砂から飛び出し、波によって運ばれ、再び素早く砂に潜ることで、波打ち際での生活を維持する。 低潮線以下でも、泥の少ない砂地では、砂に潜ることのできる生物が中心になる。二枚貝や角貝類は基本的に砂に潜って生活するものであるし、巻貝でもツメタガイなどは砂の中を潜って進み、二枚貝を食べる。ヒトデ類のモミジガイが管足に吸盤がなく、砂に潜って生活しているように、岩場では吸着して生活する動物の仲間が、砂に潜って生活するように適応したものが見られる。イソギンチャク類にも、砂の中に深く体を沈めて体を固定する種がある。沖縄諸島のサンゴ礁の砂底では、ガンガゼが群れをなして移動しつつ生活する。 波打ち際から上には、ある程度の距離を置いて海浜植物が生育する部分がある。海浜植物の帯と波打ち際の間には、一定の幅で、外見上はほとんど生物が見られない区域がある。海の生物にとっても、陸の生物に取っても住みにくい区域である。深い穴を掘って、陸を走り回ってえさを採るスナガニなどが生息する。また、海藻などの漂着物が帯状にたまった場所では、その下にハマトビムシ類やヒョウタンゴミムシなど海浜性の昆虫類が多数生息している。また、この区域の最上部にウミガメが穴を掘って産卵する。 さらにその上の区域には海浜植物が生育する。大部分が草本か背の低い木本である。北海道ではハマナスなど美しい花を咲かせるものが多く、原生花園と呼ばれる。動物としてはハマダンゴムシ、オカヤドカリなど、あるいはクビキレガイなど特有の陸産貝がいる。この区域の上部は潮風に強い海岸性の高木が生育して、海岸性の森林(海岸林)へ移行する。日本本土ではクロマツ・トベラなどからなる森林となる。砂浜に松林と言う印象が広がっているが、樹木が生長して土壌が安定するような場所では、その多くは広葉樹林に移行するものと考えられる。沖縄では、海岸林の最前線にアダンの群落が見られる。また、本土のマツに一見よく似たモクマオウが見られるが、これは外来種である。 海水に浸る部分では、砂の粒子の隙間に生活する生物群がある。その性格上、すべてが小型であり、外から見いだすことは不可能であるし、砂をかきまぜても探すのが難しく、採集には特殊な技法が必要となる。それらの生物を間隙性生物と呼ぶ。
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