実在のフラメルについての研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 00:45 UTC 版)
「ニコラ・フラメル」の記事における「実在のフラメルについての研究」の解説
上記のような錬金術師としてのフラメル像は主に『象形寓意図の書』の記載に基づき、このような伝説や、フラメルが記したとされる錬金術書は17世紀~18世紀にかけて広く伝えられるようになった。 しかし後年の研究により、『象形寓意図の書』をはじめとする錬金術書は、17世紀以降に作成された偽書であるという説が提起され、近年では多くの検証の結果、パリに実在した出版業者フラメルが錬金術に関わっていたという証拠はないという見解が評価を得ている。 最も初期にフラメル錬金術師伝説への疑義を示したのは18世紀、サン・ジャック・ド・ラ・ブーシュリ教会のヴィラン修道士で、1761年にニコラ・フラメル(ニコラス・フラメル)についての批判的評伝を出版している。ヴィラン師は教会等に残されたフラメルの記録等から、『象形寓意図の書』の記載は実在のフラメルによる記述の特徴を備えておらず、記述内容も実在のフラメルの時代に合わないといった点を指摘した。 しかしヴィラン師は錬金術に批判的な立場からこの説を主張したため、アヴィニヨンのヘルメス哲学者ドン・ペルネティとの間で激しい論争となった。(これについてはカンスリエによる『象形寓意図の書』の序文で触れられている) 近年のいくつかの研究は、フラメルの残した記録等と、筆跡・文体等について客観的な比較検討を行った結果、ヴィラン師と同様に『象形寓意図の書』は後年の別人の著作であるという結論を示している。たとえば、モントリオール大学で学位をとったクロード・ガニョンは『ニコラ・フラメル探求 : 付 - 象形寓意図の書(註解版)』のなかで、フラメルの作とされる『象形寓意図の書』が16世紀末~17世紀初めに書かれ、その本当の著者はキリスト教カバラ主義者ギヨーム・ポステル学派のベロアルド・ド・ヴェルヴィルであることを論証している。また『象形寓意図の書』は、元はラテン語で記載されていた著作を、1612年にピエール・アルノーという人物がフランス語へ翻訳し出版したということになっているが、この人物の実在性が乏しく、またラテン語の原本が見つかっていない点も偽書説の根拠となっている。ガニョンは、アルノーがヴェルヴィルの不完全アナグラムによるペンネームであると主張している。
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