天然記念物「青葉山」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 13:47 UTC 版)
「東北大学学術資源研究公開センター植物園」の記事における「天然記念物「青葉山」」の解説
天然記念物指定区域一帯は数百年にわたってほとんど人の手が入ることがなかった(→沿革)。そのため仙台市という100万都市の中にありながら、この地方の低山帯における潜在自然植生に極めて近いと考えられる森林がほぼ極相に達した状態で残存している。 仙台地方の気候的極相林とは、モミを優占樹種とする中間温帯林である。 中間温帯林とは冷温帯と暖温帯の境界付近に発達する森林で、林内においては冷温帯性の落葉広葉樹や暖温帯性の常緑広葉樹は共に優占樹種とはならず、モミやツガなどの温帯性針葉樹が優占する。 青葉山の場合、高木層では樹齢300年近いモミの巨木が優占し、亜高木層では中間温帯性落葉広葉樹(イヌブナ、コナラなど)を優占種としてそれらに冷温帯性落葉広葉樹(ブナ、ミズナラなど)と暖温帯性常緑広葉樹(カシ類、シロダモなど)が混生している。なお、このような森林は仙台地方が分布の北限となっている。 中間温帯林では生息する動植物の種類が豊富で、林内の生物多様性が高いことが知られている。青葉山の林床には豊かな森林を好むラン科の腐生植物が多く自生し、中にはヒメノヤガラなど希少な種も含まれる。またカヤランなどの着生植物にも富む。園内に自生する植物は高等植物(種子植物及びシダ植物)だけでも700種近くにものぼる。またこのような豊かな植物相を背景に、園内にはニホンカモシカのような大型哺乳類をはじめとした多様な動物も生息しており、オオタカなどの猛禽類を頂点とする複雑な食物網を構築している。 しかし、こうした中間温帯林は元来分布域が限られている上、有史以前から人間活動に伴って伐採され続け、今日ではほとんど消滅してしまっている。青葉山が天然記念物に指定されている理由は、このような生態学上重要かつ希少である豊かな生態系が大都市近郊に存在していることに学術的な価値があるためである。
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