大気圏再突入能力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/22 22:56 UTC 版)
「単段式宇宙輸送機」の記事における「大気圏再突入能力」の解説
SSTOは機体全体が大気圏に再突入するため、全体が空力的に再突入に適した形状をし、また空力加熱に耐えられる必要がある。 再突入時には、揚力を発生して飛行経路を制御するため、超音速飛行に適した主翼を有する飛行機型、主翼を持たず機体全体で揚力を発生させるリフティングボディ、釣鐘型の機体の底面を先に向けて突入する鈍頭型、先端を先に向けて突入する尖頭型などがある。いずれの場合も、使い捨てロケットでは一般的な円筒形ではないため、機体構造(とくに燃料タンク)が複雑になり、重量増加の要因となる。 空力加熱に耐える方法としては、使い捨てカプセルではアブレータを使う方法が一般的であるが、この方法は材料が溶融・気化する際の吸熱を利用するため、アブレータは使い捨てとなり、機体を再使用する場合は全面的な張り替えを必要とする。整備に必要な時間を考慮すれば、再使用可能な断熱材を使うことが望ましい。 スペースシャトルで実用化されていたのは、発泡シリカ製のタイルや炭素繊維強化炭素複合材料 (RCC) のパネルを張る方法である。このタイルは破損に弱く、飛行ごとに膨大な点検と張り替え作業を要するため、飛行費用の増大を招いた。RCCパネルはタイルより強く、高い温度に耐えることができるが、コロンビア号事故では飛行中に破損して致命傷となった。 X-33では、耐熱合金であるインコネルの薄板を、機体構造から離して張る方法が検討された。この方法ではタイルより丈夫で、整備も容易になると考えられている。 また、傾斜材料の使用も考えられている。耐熱性や断熱性に優れるセラミックは、その断熱性ゆえ、表面を加熱すると表面だけの温度が上昇し、膨張率の違いで割れてしまう。しかし、薄くすると強度が低下して使い物にならない。そこで、表面はセラミックスだが裏面は金属で、かつ2つの材料を張り合わせるのではなく、内部で徐々に混ざり合い変化するような材料が傾斜材料である。 これらの材料を導入したとしても、衛星軌道上では微小なデブリの衝突を完全に防ぐことは不可能であり、デブリによる破損が生じる危険への対処が必要となる。使い捨てロケットでは、軌道上で廃棄する部分を大気圏突入寸前まで装着したままとし、断熱材を保護する方法が採られていることから、この点でSSTOは使い捨てロケットに劣るとする意見もある。
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