大師東丹保遺跡の動物遺体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/30 16:31 UTC 版)
「大師東丹保遺跡」の記事における「大師東丹保遺跡の動物遺体」の解説
大師東丹保遺跡ではⅠ~Ⅳの各区から動物遺体が出土している。山梨県は内陸部であるため動物遺体の出土に乏しい地域であるが、1990年代には中部横断自動車道・甲西道路の建設に伴い、両道のルート上に所在する低湿地遺跡の発掘調査が実施された。これにより近在でなおかつ立地条件が類似している大師東丹保遺跡・百々遺跡(南アルプス市百々)・二本柳遺跡(南アルプス市十日市場)の三遺跡において多数の動物遺体が出土した。 大師東丹保遺跡出土の動物遺体の特徴は同定標本数(NISP)・最小個体数(MNI)による組成で見るとウマを主体にイヌ・ウシが続く傾向が見られ、二本柳遺跡と共通する。大師東丹保遺跡の特徴はこれに加えシカ・イノシシなどの狩猟獣や、愛玩動物であるネコ・海産物であるタイが出土しており、組成の多様性が見られる。二本柳遺跡では若干の多様性が見られ、カモシカ・キツネなどが出土している。 大師東丹保遺跡・百々遺跡・二本柳遺跡における動物遺体の組成差に関しては、百々遺跡の場合は古い年代の資料を含むため年代差であることが推定されるが、百々遺跡では9世紀から12世紀まで継続的にウシが見られるため、年代差の要因は否定されている。また、大師東丹保遺跡と二本柳遺跡では同定された標本数が近いことからも、両遺跡における動物遺体の組成差は、それぞれの遺跡の性格を反映していると考えられている。 さらに、景観復元の観点からすると、二本柳遺跡の景観が単純な水田地帯であるのに対し、大師東丹保遺跡では水田環境に加え狩猟が行われる森林が加わる。愛玩動物であるネコが存在し、内陸部において希少性の高い海産物が出土していることからも、富裕層の生活環境が推定される。このため、大師東丹保遺跡は二本柳遺跡と比較して、多様な性格の環境を有する遺跡であると評価されている。 分布・出土状況に関しては、大師東丹保遺跡では調査区東側の低湿地を中心に分布している。Ⅱ区では掘立柱建物のある居住区西側の水田・溝が分布する廃棄域の存在が見られた。この東居住区から東側の地区には祭祀域が存在し、動物遺体も祭祀に関わったものである可能性が指摘される。Ⅲ区では南北に走る溝を中心とした動物遺体の分布状況を示している。
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