大塚史学とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 大塚史学の意味・解説 

大塚久雄

(大塚史学 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/30 01:52 UTC 版)

大塚 久雄 おおつか・ひさお
生誕 (1907-05-03) 1907年5月3日
死没 (1996-07-09) 1996年7月9日(89歳没)
国籍 日本
研究分野 経済史
影響を
受けた人物
カール・マルクス
マックス・ヴェーバー
内村鑑三
本位田祥男
受賞 朝日賞
テンプレートを表示

大塚 久雄(おおつか ひさお、1907年明治40年〉5月3日 - 1996年平成8年〉7月9日)は、日本経済史学者。東京大学名誉教授。専攻は英国経済史で、西洋諸国における近代資本主義、近代市民社会の研究で知られ、マックス・ウェーバーの社会学とカール・マルクスの唯物史観論の方法を用いて構築した大塚史学は国際的評価を受けた[1]

高柳暁井手久登は娘婿。

経歴

1907年京都府生まれ[2]。京都府立京都第一中学校(現・京都府立洛北高等学校・附属中学校)卒業後、旧制第三高等学校入学。このとき、片足を負傷し、後に切断することになる。1930年、東京帝国大学経済学部卒業[2][3]。大学時代は本位田祥男内村鑑三に師事した。法政大学非常勤講師(1933年)、同大助教授(1935年)、同大教授(1938年)、東京帝大経済学部助教授(1939年)[4]を経て、1947年同大学教授、1968年から同大学名誉教授[1]日本学士院会員(1969年)、文化功労者(1975年)[5]勲二等旭日重光章(1977年)、文化勲章(1992年)を受ける[1]1994年キリスト教功労者を受賞[6]

1996年7月9日午前4時42分、老衰のため東京都練馬区の自宅で死去した[1]。蔵書は,大塚久雄文庫として福島大学付属図書館に収納されている。

研究内容

大塚はイギリスの"近代化"過程を資本主義と民主主義のモデルと考え、範となる英国と比較しつつ他国の資本主義の成り立ちがもつ諸課題について考察した。

例えば『欧州経済史序説』や『欧州経済史』では、イギリス資本主義の発生史について、"農村の織元"などの中間生産者に着目し、彼らの一部が産業資本家に成長したことで、イギリスは世界初の自生的な産業革命を成功させたと述べている。これと比較し、例えばドイツでは、東ドイツのグーツヘルシャフト(農場領主制)が農村工業を萎縮させたため、寄生地主制の残る特殊な構成の資本主義となったと主張している[7]

そしてマルクス経済学と、特にウェーバー社会学を参考とし、資本主義を可能にした人間の生き方とはどのようなものか、と言う視点から考察を深めていった。

彼が主張した経済史・思想史の体系は大塚史学と呼ばれ、戦後歴史学の理論的な基盤となった[7]

批判

大塚がその歴史像を形成した1940〜50年代は、現在のように現地に赴き一次資料にあたる手法ではなく、欧米の二次文献をもとに理論化し直すと言う手法が主体であった。しかし、一次資料から実証的に歴史像を描くことを試みる現在の歴史学の手法が一般的になるにつれ、彼の研究は急速に参照されなくなっている[7]

著書

単著

編著

共編著

訳書

著作集

  • 『大塚久雄著作集』[8]岩波書店, 1969年、再版1975年、新版1986年
  1. 「株式会社発生史論」
  2. 「近代欧洲経済史序説」
  3. 「近代資本主義の系譜」
  4. 「資本主義社会の形成」
  5. 「資本主義社会の形成」
  6. 「国民経済」
  7. 「共同体の基礎理論」
  8. 「近代化の人間的基礎」
  9. 「社会科学の方法」
  10. 「信仰と社会科学のあいだ――小文・補遺」
  11. 「比較経済史の諸問題」- 以下は新版での追加
  12. 「社会科学とヴェーバー的方法」
  13. 「意味喪失の文化と現代」

脚注

  1. ^ a b c d 日本経済新聞 1996
  2. ^ a b 大塚 1966の筆者紹介を参照。
  3. ^ 『官報』第985号、昭和5年4月15日、p.392
  4. ^ 『東京帝国大学一覧 昭和15年度』東京帝国大学、1941年、p.426
  5. ^ 大塚久雄『出身県別 現代人物事典 西日本版』p362 サン・データ・システム 1980年
  6. ^ 日本キリスト教文化協会 顕彰者一覧※2022年10月23日閲覧
  7. ^ a b c 小川幸司 成田龍一 編 『シリーズ 歴史総合を学ぶ❶ 世界史の考え方』, 岩波新書, 2022年, p3-7
  8. ^ 担当者による評伝に、石崎津義男『大塚久雄 人と学問』みすず書房, 2006年

参考文献

  • 大塚久雄の評伝は 『20世紀の歴史家たち』第1巻(刀水書房、1997) pp.229-244
→ More in 近藤和彦 『文明の表象 英国』(山川出版社、1998) pp.28-112
→ 近藤和彦 「戦後史学の胚胎と死」『史学雑誌』105編11号(1996) 
→ 近藤和彦 「歴史理論」『史学雑誌』106編5号(1997) 
→ 住谷一彦・和田強(編)『歴史への視線 - 大塚史学とその時代』の書評 in 『社会経済史学』66巻(2000) 
→ 発言・小品文  → お蔵    

関連項目




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「大塚史学」の関連用語

大塚史学のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



大塚史学のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの大塚久雄 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS