変遷する北極星
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 05:42 UTC 版)
歳差運動により天の北極が移動するため、北極星の役割を果たす星は年ごとに天の北極に近づいて極値となってから離れていき、他の星との比較によって北極星の役割を交代していく。この変化は人類の有史時代の長さに比べてゆっくりで、およそ25,800年で元の星に戻り、これを繰り返す。ただし、各恒星の固有運動があるために正確な繰り返しとはならない。例えばうしかい座α星のアークトゥルスは全天21個の一等星のうち固有運動がケンタウルス座α星に次いで大きく、紀元前58,000年頃に天の北極に近く北極星となっていた。計算から、紀元前2,000年代にはりゅう座α星(Thuban)が天の北極近くにあった。紀元前2,500年のエジプト第4王朝に建てられたクフ王のピラミッドは、建設当時の北極星とおおぐま座のミザール(視等級2.2等)を使って正確に真北を求めて建設されていたらしいことがわかっている。およそ紀元前12,000年頃はこと座のベガが北極星であり、いまから約11,000年後には再びベガが北極星になる。 北極星と認識される条件は、天の北極に近く明るいこと、近接する明るい星がないことである。また、星の視等級が暗い場合、都会では光害などで3等星以下は目立たず、たとえ天の北極近くにあっても有用ではないと考えられる。ポラリスはその固有運動により、紀元前23,600年頃は天の北極に現在より近く、西暦27,800年頃は現在より離れると予想されている。下記の過去や未来の北極星のうち、天の北極から1°以内に収まる星はポラリスとりゅう座α星であり、りゅう座α星は天の北極に最も近くなる。 Polalis Dubhe Kochab Thuban Edasich τ Her ι Her Errai Alvahet Alfirk Alderamin Deneb Fawaris Vega 歳差による天の北極の移動。星の位置は現在観測される位置。数字は西暦年を表す。 以下に北極星として交代する星を示す。時期は北極星として見え始める時期ではなく、各星が天の北極に最も近づく時期を示し、下記の時期を中心とした前後数世紀はその星が北極星となる。下記で表した視等級は現在の観測に基づく。 過去の北極星 紀元前12,000年頃 - こと座α星(ベガ 英: Vega、視等級0.0等) - 明るいが、天の北極から5°ほど離れる。 紀元前10,000年頃 - ヘルクレス座ι星(視等級3.8等) 紀元前7,700年頃 - ヘルクレス座τ星(英語版)(視等級3.9等) 紀元前5,300年頃 - りゅう座ι星(エダシク 英: Edasich、視等級3.3等) 紀元前3,000年頃 - りゅう座α星(トゥバン 英: Thuban、視等級3.7等) 紀元前1,100年頃 - こぐま座β星(コカブ 英: Kochab、視等級2.1等) - 天の北極まで約7°(満月の直径のおよそ14個分)まで近づく。 西暦500年頃~ - こぐま座α星(ポラリス 英: Polaris) 現在の北極星 こぐま座α星(ポラリス、視等級2.0等) - 西暦2,100年頃に天の北極に最接近する。 未来の北極星 西暦4,000年頃 - ケフェウス座γ星(エライ 英: Errai、視等級3.2等) 西暦6,000年頃 - ケフェウス座β星(アルフィルク 英: Alfirk、視等級3.2等)とケフェウス座ι星(視等級3.5等)がともに天の北極を周回する。 西暦7,800年頃 - ケフェウス座α星(アルデラミン 英: Alderamin、視等級2.5等) 西暦10,200年頃 - はくちょう座α星(デネブ 英: Deneb、視等級1.3等) - ただし天の北極から7°離れる。 西暦11,600年頃 - はくちょう座δ星(英: Fawaris、視等級2.9等) 西暦13,500年頃 - こと座α星(ベガ)※歳差の回帰
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