基本的な音符と休符の種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 15:23 UTC 版)
基本的な音符の長さ(音価)は、全音符を基準として、2分割あるいは2倍を繰り返す2の冪の体系となっており、「○分音符」の○に入る数字も2の冪乗数である。 全音符・全休符(ぜんおんぷ・ぜんきゅうふ) 基本となる音価を持つ。全休符は全音符相当の休止に用いられる他、多くの拍子において、1小節休むことを表す。全休符は線の下に接して書かれる。下のように第3間に書かれるのが原則である。 4分音符5拍以上ある小節で4分音符4つ分の休みとして表示しその後も拍が続く場合は、左寄せで全休符を書く。1小節休みの場合の表示は、その小節の中央に全休符を書く。 全音符 英 semibreve, 米 whole note, 独 ganze, 仏 ronde 伊 Intero 全休符 仏 pause 伊 semibreve 倍全音符・倍全休符 全音符の2倍の音価を持つ。倍全音符には下に挙げたものの他、いくつかの形がある。倍全休符は4/2拍子の1小節など、倍全音符相当の休止に用いられる他、2小節の休止にも用いられる。また3/2拍子の1小節の休止にも用いられることがある。倍全休符は線と線の間を埋めて書かれ、原則として第3間に書かれる。 英 breve, 米 double whole note, 独 Doppelganze, 仏 carée, 伊(羅) brevis ロンガ 全音符の4倍の音価を持つ。ロンガ音符は現在の記譜法が確立する以前の時代に用いられていたが、現在では用いられていない。ロンガ休符は現在では4小節の休止に用いられる。 マクシマ 全音符の8倍の音価を持つ。マクシマ音符も現在の記譜法が確立する以前の時代に用いられていたが、現在では用いられていない。マクシマ休符は現在では8小節の休止に用いられる。 2分音符・2分休符(にぶおんぷ/にぶんおんぷ・にぶきゅうふ/にぶんきゅうふ) 全音符の2分の1の音価(基本2拍)を持つ。2分休符は必ず線の上に接して書かれる。下のように第3間に書かれるのが原則である。2分休符は2分音符相当の休止に用いられる他、6/8拍子や12/8拍子などにおいて、1小節の半分の休止に用いられることもまれにある。 2分音符 英 minim, 米 half note, 独 halbe, 仏 blanche, 伊 metà 2分休符 仏 demi-pause, 伊 minima 4分音符・4分休符(しぶおんぷ/しぶんおんぷ・しぶきゅうふ/しぶんきゅうふ) 全音符の4分の1の音価(基本1拍)を持つ。4分休符は下の画像に挙げたものの他、8分休符を左右反転させた形もある。 4分音符 英 crotchet, 米 quarter note, 独 Viertelnote, 仏 noire, 伊 quatro 4分休符 仏 soupir, 伊 semiminima 8分音符・8分休符(はちぶおんぷ/はちぶんおんぷ・はちぶきゅうふ/はちぶんきゅうふ) 全音符の8分の1の音価(基本2分の1拍)を持ち、音符の符尾および休符の黒玉は1つである。8分音符以下の音符では符尾が付くが、同じ音符が続くときなどに符尾をつなげて書くことができる。これを連桁(れんこう)という。連桁によって符尾が煩雑にならないばかりでなく、音符のまとまりがわかりやすくなる。 8分音符 英 quaver, 米 eighth note, 独 Achtelnote, 仏 croche, 伊 ottavo 8分休符 仏 demi-soupir, 伊 croma (イギリス式英語の crotchet 4分音符と、フランス語の croche 8分音符を混同しないこと) 16分音符・16分休符 全音符の16分の1の音価(基本4分の1拍)を持ち、音符の符尾および休符の黒玉は2つである。 16分音符 英 semiquaver, 米 sixteenth note, 独 Sechzehntelnote, 仏 double croche, 伊 sedecesimo 16分休符 仏 quart de soupir, 伊 semicroma 32分音符・32分休符 全音符の32分の1の音価(基本8分の1拍)を持ち、音符の符尾および休符の黒玉は3つである。 32分音符 英 demisemiquaver, 米 thirty-second note, 独 Zweiunddreißigstelnote, 仏 quadruple croche, 伊 trentaduesimo 32分休符 仏 huitième de soupir, 伊 biscroma 64分音符・64分休符 全音符の64分の1の音価を持ち、音符の符尾および休符の黒玉は4つである。 64分音符 英 hemidemisemiquaver, 米 sixty-fourth note, 独 Vierundsechzigstelnote, 仏 quintuple croche, 伊 sessantaquatresimo 64分休符 仏 seizième de soupir, 伊 semibiscroma 128分音符・128分休符 全音符の128分の1の音価を持ち、音符の符尾および休符の黒玉は5つである。ベートーヴェンのソナタ悲愴の第一楽章やアルカンのグランドソナタの第四楽章などに用例あり。 英 semihemidemisemiquaver, 米 hundred twenty-eighth note, 独 Einhundertachtundzwanzigstelnote, 仏 sextuple croche, 伊 centoventottesimo 256分音符・256分休符 全音符の256分の1の音価を持ち、音符の符尾および休符の黒玉は6つである。ベートーヴェンのピアノコンチェルト第3番の第二楽章などに用例あり。 更に音価の小さい音符・休符 以上の音符・休符から推し進めていけば、より音価の小さい音符・休符としては、512分音符(休符)、1024分音符(休符)、2048分音符(休符)、4096分音符(休符)…が理論上は無限に考えられ、音符の符尾および休符の黒玉は音価が半分になるごとに1つずつ増えていくことになる。実例としては、Anthony Philip Heinrich作曲のToccata Grande Cromaticaに1024分音符(元の譜面では誤って2048分音符となっている)の用例があり、パロディ作品の妖精のエアと死のワルツには65536分音符の用例がある。Finaleで扱える最小の音価は4096分音符であり、GNU LilyPondで扱える最小の音価は1073741824(2の30乗)分音符である。 アメリカ式英語、ドイツ語、イタリア語は、16, 32, 64などの数字を序数で言えば良いので、日本語と相対していてわかりやすい。イギリス式英語、フランス語はそれぞれ独自の言い回しで、慣れが必要である。
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