固着性の生活
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 07:36 UTC 版)
動物が移動能力を持つのは、餌を取らなければならないからである。つまり、固着性の動物は、移動せずに餌を取らなければならない。 栄養の面から固着性動物を見ると、大きく二つの形がある。 一つは、寄生性のもので、宿主の体の上に自分の体を固定するものである。魚類の体表面に寄生するイカリムシや植物体表面に寄生するカイガラムシなどがその例である。ただし、動物の体表に体を固定する寄生虫を固着性ということは少ない。 もう一つは、触手など、獲物を捕らえる仕組みを持つものである。代表的なのは、イソギンチャクなど刺胞動物に見られる。触手に毒があって、かなり大型の動物も捕らえることができる。しかし、それより多く見られるのは、海産の固着性動物の多くがそうであるが、プランクトンやデトリタスを摂食するものである。触手を広げたり、水を吸い込んで鰓で濾過したりという形で、水中に漂う小動物や有機物微粒子を拾い集めて餌とする生活である。特に海洋生態系においては、植物遺体や動物遺体、排泄物等は水中で分解され、有機物微粒子となる量が多く、物質循環の中で大きな位置を占める。それを餌とする動物も当然ながら多い。海においては、岩や海藻などの表面に、一面に動物が付着しており、その多くがこの型に入る。鰓で微粒子を濾し取って食べるものを濾過摂食者といったりもする。また、鰓で濾し取るにせよ、触手を広げるにせよ、それらの表面に繊毛を持ち、粘液を分泌してそこに微粒子を吸着させ、繊毛で口に送り込んで食べるものが多く、このやり方を繊毛粘液摂食という。 さらに造礁サンゴやシャコガイでは、体内に褐虫藻を共生させ、その光合成産物を受け取ることもしている。 海の生態系、特に海岸や浅海においては、固着性の生物は大きな比重を占める。岩礁海岸の潮間帯では、海藻と共に固着性動物の帯状分布が顕著に観察され、よく研究の対象になっている。
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