図像・技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/21 09:53 UTC 版)
画面中央の阿弥陀如来は蓮華座上に正面向きに坐す。阿弥陀の印相には説法印(当麻曼荼羅の阿弥陀像など)、定印(平等院鳳凰堂の本尊像など)、来迎印があるが、本像は来迎印を結ぶ(右手を胸の高さに上げ、左手を膝のあたりに下ろし、両手の各第1・2指を捻じて輪をつくる)。阿弥陀の周囲を雲に乗り、楽器や幡をたずさえた聖衆(菩薩の一団)がとりまく。菩薩の多くは楽器を演奏し、あるいは幡を捧げ持つ。画面の随所に散華が舞っている。左幅の下方には松樹、紅葉、水面、土坡などからなる、やまと絵風の風景が描かれ、この場所が極楽浄土ではなく此岸(現世)であることを示している。阿弥陀聖衆の来迎の対象は画中には描かれず、画面の外に設定されている。 阿弥陀像が金色身に表されるのに対し、周囲の菩薩像は彩色で表され、赤と緑を基調とした衣を着け、輪郭線は太い朱線で描き起こしている。描かれている像は阿弥陀を含め全部で33体である。阿弥陀の手前左右には、向かって右に蓮台(往生者を迎え取るためのもの)を捧げ持つ観音菩薩、左に合掌する勢至菩薩を配する。阿弥陀の左右には5体のやや大きめの像が、ほぼ正面向きに表され、うち3体は僧形である。これら5体に観音・勢至を加えた7体は、良源が比叡山横川常行堂に安置した阿弥陀五尊像の系統を引くともいわれ、『往生要集』「聖衆倶会楽」に説く七菩薩を表すともいう。 阿弥陀像は、現状では身部、衣部とも金色を呈し、輪郭線を朱で描き起こしている。阿弥陀像の彩色については、従来の解説では皆金色像であるとされ、身部は金泥、衣部は藤黄(黄色の顔料)を塗ったものとされていた。しかし、彩色材料の蛍光X線分析の結果、衣部については、赤、青、緑などの5色で塗り分けた上に截金文様を置いたものであることがわかった。また、身部については、裏箔(画絹の裏から金箔を貼る)を施した上で金泥を塗っていること、金泥の塗り方には濃淡があり、金泥によって裏箔に対する隈取を行っていることがわかった。阿弥陀像の唇の朱彩は周囲の部分と色調が異なり、後世の補彩とみられる。眉間には、阿弥陀像には不可欠の白毫がみられず、その部分には穴が開いていたような痕跡がある。そのため、絵の裏側で灯明をともし、白毫から光明が指すような演出をしたのではないかとする説もある。
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