図像の秩序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/05 18:34 UTC 版)
こうして見てみると、一見して錯雑して見える画面中の図像は、ある秩序をもって描かれていることが分かる。第1のまとまりの図像は画面左上と右下を結ぶ対角線を構成し、第2から第4の図像は、画面右上と左下を結ぶ対角線を構成する。すなわち、紀三井寺の縁起にまつわる図像とその周囲の名所をめぐる図像は、対角線に沿ってX字状に配されることにより、画面に秩序をもたらしている。寺域を構成する地物もまた、秩序を画面にもたらすように配されている。中央に桜に囲まれて描かれる観音堂は、いうまでもなく本尊たる十一面観世音菩薩を祀る本堂であり、その四囲には、紀三井寺の名の由来となった三井水(清浄水・吉祥水・養老水)、聖俗の境界たる仁王門が描かれる。これらの地物を結ぶと、観音堂と仁王門は聖俗を結ぶ経路として画面の縦の軸に、そして三井水と観音堂を結ぶ線は横の中心線となり、その延長線上には藤白王子の堂舎を見出すことができる。 前述のように、紀三井寺参詣曼荼羅はその中央に描かれた紀三井寺と右端の藤白坂とに画然と分かたれている。両者は本来異質な存在であるが、同一の画面中に収められる限りにおいて、世に聞こえた和歌浦一帯の風光を語るため引き合いに出される事物としての同質性によって結び付けられ、縁起譚と在地伝承を一図に収めた一幅の名所図となっているのである。
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