哺乳類の前肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 10:12 UTC 版)
現世(完新世)の動物では、特に哺乳類において生態に応じた形状の特化が確認できる。樹上生活を送る動物の多くは手に鉤爪(かぎづめ)を持ち、これを樹木に引っ掛けて移動するが、霊長目は木や物をしっかりと掴むことのできる構造の手(拇指と他の指との対向性)を進化させ、鉤爪の代わりに、指の末端を補強する役割を持つ扁爪(ひらづめ)を発達させた。霊長類の始原的動物が鉤爪を捨てて木の枝を握ったことは、後世の子孫の一つであるヒトにとってはその誕生の第一条件と言ってよい。クジラ、カイギュウ、アザラシ、アシカなど主たる海生哺乳類の手は、基本構造こそ陸上哺乳類と同じであるが、水中生活への進化適応の結果として魚の鰭(ひれ)のような形態に変化している(ラッコなど例外はある)。カモノハシは指の間に水掻きを有する(ビーバーは前肢には持たない)。コウモリでは第1指(ヒトの親指に相当)に鉤爪(かぎづめ)があり、他の4本の指は伸張して皮翼を張る骨組みの役割を担っている(図-1の2.参照)。現生の四足歩行をする哺乳類の指も生態に適った進化を遂げており、食肉目はその手足に、足音を消す働きを持ち衝撃をも吸収する蹠球(しょきゅう。肉球)を発達させている。有蹄哺乳動物(奇蹄目や偶蹄目、長鼻目など)では、体重を支えたり走ったりするための蹄(ひづめ)が高度に発達し、指は退化(退化的進化)を遂げて消失もしくは痕跡化しているものが多い。この方向性で最も進化を進めているのはウマ科であり、彼らは第3指(中指)一つで大地に立っている。また、四足歩行をする動物の常として、前肢と下肢に著しい差異は見られず、足とほぼ同様の構造体である。
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