各々の凝固因子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 09:27 UTC 版)
個々の凝固因子には通常の自然科学の慣例(発見者が名を付ける)ではなく発見順のローマ数字が使われている。これは、次々に新しい因子が発見され、しかも後になってそれは同じ因子の別の形態だと言うことが判明したためである。後者の理由により、いくつかの欠番がある。ただし、最初の4つはローマ数字による呼び方は余り使われない。 フィブリノーゲン・フィブリン(第I因子) プロトロンビン・トロンビン(第II因子) 組織因子(第III因子、トロンボプラスチン) カルシウムイオン(第IV因子) 第V因子(プロアクセレリン):第1染色体長腕(1q23)にマップされたF5遺伝子によってコードされる分子量33000のタンパク質で、肝臓で発現し血流に放出される。第506残基がアルギニンからグルタミンへと変異した多型を(その多型が多いオランダの街の名前から)第V因子ライデン変異(Factor V Leiden)と言い、静脈血栓塞栓症の増加がみられる。黒人・黄色人種ではまれである。また、この遺伝子は常染色体劣性遺伝のため欠損症はまれである。 第VI因子は欠番である(第Va因子の旧名)。 第VII因子(プロコンペルチン) 第VIII因子:X染色体長腕末端(Xq28)にマップされたF8遺伝子によりコードされる分子量約3万のタンパク質。血漿中では、フォン・ウィルブランド因子と複合体を形成して存在する。この欠損により血友病Aを罹患する。 第IX因子(クリスマス因子):X染色体長腕末端近く(第VIII因子に隣接するXq27領域)にマップされたF9遺伝子によりコードされる分子量約55000〜60000の糖タンパク質。この欠損により血友病Bを罹患する。上図のように、第VIII因子または第IX因子を介する反応以外はそれをバイパスする反応経路があるが、第VIII因子および第IX因子にはない。それゆえ血友病AおよびBは先天性の凝固障害でも特に重篤な物となる。またX染色体上にマップされており、染色体の末端にも近いことから、他の凝固障害に比べて罹患率が高く、新規に発生する突然変異も無視できない頻度で存在する。 第X因子(スチュアート・ブラウアー因子)第13染色体長腕末端近く(第VII因子に隣接する13q34領域)にマップされたF10遺伝子によりコードされる分子量約35000の糖タンパク質で、主に肝でビタミンK依存的に合成され血流に放出される。 第XI因子(血漿トロンボプラスチン前駆物質)第4染色体長腕末端近く(4q35領域)にマップされたF11遺伝子によりコードされる80kDaのタンパク質で,S-S結合した二量体を形成し、さらに高分子量キニノゲンと1:1で結合している。 第XII因子(ハーゲマン因子) 第XIII因子:フィブリンの安定化。 プレカリクレイン 高分子キニノゲン(Fitzgerald因子)
※この「各々の凝固因子」の解説は、「凝固・線溶系」の解説の一部です。
「各々の凝固因子」を含む「凝固・線溶系」の記事については、「凝固・線溶系」の概要を参照ください。
- 各々の凝固因子のページへのリンク