単筒式ショックアブソーバー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 17:01 UTC 版)
「ショックアブソーバー」の記事における「単筒式ショックアブソーバー」の解説
単筒式ショックアブソーバーは筒が単層構造になっており、筒の内部はオイルが満たされたオイル室と高圧のガスが充填されたガス室に分けられ、その間を自由に動くことができるフリーピストンによって仕切られた構造を有する。オイルリザーバータンクを別体としてタンク内にフリーピストンとガス室を設けたものもある。ピストンロッドが進入した体積分のオイルはフリーピストンを押し下げてガス室を圧縮する。また、減衰力は伸び側、縮み側ともにオイル内を移動するピストンに設けられたバルブによって制御される。 単筒式は構造が単純なため外径に比して筒厚やピストンロッド径を増やすことができ、強度を確保しやすい。また、高圧のガス室によってオイルが加圧されているためキャビテーションが起きにくく、ガス室とオイル室がフリーピストンで隔てられているため設置方向を選ばないなどの長所がある。一方で、高圧のガスを密閉する必要があるフリーピストンや延び縮みの両方向の減衰力制御機構を有するピストンバルブなどに高精度の部品が必要とされる。厳重なオイルシールの性能が必要となるので、初期動作が渋い傾向がある。またガス室の分だけダンパー全長が長くなるため、別体のガスリザーバーを持つものもある。 単筒式ショックアブソーバーは高圧ガスを使用していることからガスショックアブソーバーと呼ばれ、前述の低圧ガスショックアブソーバーと区別して高圧ガスショックアブソーバーとも呼ばれる。あるいは、開発者の名を取ってド・カルボン式と呼ばれることもある。 詳細は「ビルシュタイン#歴史」を参照 単筒式ショックアブソーバーの空気室を拡大し空気ばねの役割を持たせることでコイルスプリングの省略するもの主として航空機で広く用いられており、オレオ式ストラット(Oleo Strut)と呼ばれる。日本では萱場製作所(現:KYB)の製品が零式艦上戦闘機などの降着装置に使用されていた。戦後、オレオ式ストラットの技術が、三菱・みずしまなどのオート三輪や、陸王などオートバイーにオレオ式フォークの名称で採用されていた。 単筒式ショックアブソーバーの車体への取り付けは、オイルシリンダーに対してピストンロッドが上側に配置される正立式と、その逆の倒立式の2種類に分けられる。倒立式はオイルシリンダー側がボディ側に固定されるためばね下重量の軽減ができる。倒立式をストラット式サスペンションに用いる場合、ピストンロッドの周囲にシリンダーよりも太いカバーが設けられ、正立式に比べるとサスペンションへの取付剛性を高くでき、ストラット全体の曲げに対する剛性も高くできる。しかし、ピストンロッドとシリンダーの摺動だけでなく、カバー内側とシリンダー外側を摺動させながら埃や水の浸入を防ぐ構造とするため重量やコストが増える。
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