南アジアにおける展開
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/17 06:13 UTC 版)
南アジア(インド)においては、12世紀のガズナ朝から19世紀のムガル朝に至るイスラーム王朝の宮廷語であるペルシア語で盛んにガザルが作られていたが、時代が下るにつれ現地語でも作られるようになった。17世紀後半にはハイダラーバードを中心に、ニザーム王国やマイソール王国といったデカンの王国の宮廷で、「レーフタ(英語版)」によりインド風の表現を用いたガザルが作られていた。中でもワリー・モハメド・ワリーはウルドゥー語ガザルの創始者とみなされる。「レーフタ」はウルドゥー語やダカニー・ウルドゥー語の前身となった言葉である。ワリーはあるとき北遊してデリーの詩会でダカニーによるガザルを披露した。それまでペルシア語で詩作していたムガル朝の文人たちは刺激を受け、盛んにウルドゥー・ガザルを制作するようになった。18世紀にはデリーや、アワド太守の宮廷があるラクナウでウルドゥー・ガザルが盛んになり、18世紀から20世紀にかけての時代、ミール、サウダー(英語版)、ザウク(英語版)、ガーリブ、イクバールなどの詩人が活躍した。 20世紀前半にはアトゥルプロサド・セン(英語版)やカジ・ノズルル・イスラムらによってベンガル語でもガザルが制作され始めた。1910年代に軍人としてカラーチーにも滞在した反逆の詩人ノズルルは、1920年代後半からガザルの制作を始め、ウルドゥー・ガザルの様式を利用してベンガル語で愛をうたった。ノズルルのガザルは、詩人独自のタール(英語版)(韻律)を伴うものもあり、ベンガル詩の可能性を拓いた。 インドやパキスタンでは、現在も恋愛詩として鑑賞されている。特にウルドゥー語のガザルはカッワーリーなどの歌曲に用いられ、映画で使われることも多い。 歴史的には主に西アジアから南アジアにかけての地域に伝播したが、1990年代半ばから英語でもガザルによる詩作が盛んになりつつある。
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