動物学的説明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 09:21 UTC 版)
今日では哺乳類のジュゴンの見間違いに端を発したというひとつの説があるが、これは熱帯種であり、ジュゴンの生息外の海域にも人魚伝説があるのだから、日本全土や世界全ての人魚伝説をジュゴン種に基づかせることができないのは理の当然である。 ジュゴンの生息地の北限は沖縄(旧琉球王国])であり、八尾比丘尼伝説が伝承される日本本土の各地では、個体としては古来およそ見かけることができない生き物ということになる。しかしながらジュゴンの仲間には熱帯性でないものもいた、と反論される。同じ海牛目(Sirenia)にはかつてステラーカイギュウがベーリング海に生息しており、日本の近海に現れた可能性も否定できない。またカイギュウでなくとも、アザラシ類やイルカ類も、人魚伝説のモデルとなりうる候補に挙げられる。 魚類学者の高島春雄も、「日本人が本物のジュゴンを見たのは明治以降だが、古い時代にも人魚の目撃証言がある」と指摘している。このことから、北陸地方にも漂着する深海魚のリュウグウノツカイが(少なくとも日本の)人魚の正体であろう、と九州大学名誉教授の内田恵太郎(1960、62年)を皮切りに考察されている。少なくとも江戸時代の例では、人魚は頭部付近に鶏冠(とさか)つ、あるいは赤い長髪と描写されており、リュウグウノツカイの特徴に一致し説の有力視材料になっている。 ジュゴンは、西洋人が「人型魚」「婦人魚」などと称し、17世紀の書物において薬として喧伝し、江戸時代の日本の学者も「人魚の骨」の薬効としてこれを紹介している(§西洋自然史の人魚、§へいしむれるの薬効を参照)。 「婦人魚」の骨は、高価ビーズに加工(すなわち数珠つなぎにした)ともフィリピン紀行文に記される。
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