力学における時間微分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/02 00:36 UTC 版)
ニュートン力学やラグランジュ力学においては、基本変数として位置と、その時間微分である速度を用いる。速度を時間微分したものを加速度、さらに時間微分したものを躍度(加加速度)と呼ぶ。 ハミルトン力学においては、物理量 A ( t ) {\displaystyle A(t)} の時間微分は、ポアソン括弧[ ]を用いて、 d d t A ( t ) = [ A ( t ) , H ] + ∂ ∂ t A ( t ) {\displaystyle {\frac {d}{dt}}A(t)=[A(t),H]+{\frac {\partial }{\partial t}}A(t)} と表される。ここで H はハミルトニアンである。 量子力学においても、上記の物理量 A およびハミルトニアン H をエルミート作用素、ポアソン括弧を作用素の交換子を −h/2πi で割ったものに置き換えることで同様の時間発展方程式を与えることができる(h はプランク定数、i は虚数単位、π は円周率)。 d d t A ( t ) = − 2 π i h [ A ( t ) , H ] + ∂ ∂ t A ( t ) . {\displaystyle {\frac {d}{dt}}A(t)=-{\frac {2\pi i}{h}}[A(t),H]+{\frac {\partial }{\partial t}}A(t).} この方程式はしばしば換算プランク定数 ħ = h/2π を用いて d d t A ( t ) = 1 i ℏ [ A ( t ) , H ] + ∂ ∂ t A ( t ) {\displaystyle {\frac {d}{dt}}A(t)={\frac {1}{i\hbar }}[A(t),H]+{\frac {\partial }{\partial t}}A(t)} と表される。この方程式はハイゼンベルクの運動方程式と呼ばれる。ハイゼンベルク方程式は、ハイゼンベルク描像における物理量の時間発展を与える量子力学の基本方程式である。 その他生物学では、ロジスティック方程式 などにこの時間微分が用いられる。 ある個体群において、時刻 t に個体数が N 体が存在しているとする。実際の生物個体数は不連続な値(整数)をとるものであるが、数学的扱いを簡便にするために、個体数は連続な値(実数)をとるものとする(1.5体といったような値も含める)ことがしばしば行われる。実際の生物でいえば、個体数が多かったり各個体の世代が重なったりしていれば、このような近似も妥当性を帯びてくる。個体数を連続な値とすれば、個体数の増加率は N の時間微分 dN/dt で表すことができる。 個体数について、ある個体の出生と死亡という2つの要因のみによって個体数は増減する。個体群の出生率が死亡率を上回っていれば、個体数は増え続けるということになる。さらに簡略化するために出生率と死亡率を常に一定であるとする。個体数当たりの出生率を b、個体数当たりの死亡率を d とすれば、個体数の増加率は差し引きした b − d に個体数 N を掛け合わせた値となる。よって個体数増加率 dN/dt は d N d t = m N {\displaystyle {\dfrac {dN}{dt}}=mN} と表される。
※この「力学における時間微分」の解説は、「時間微分」の解説の一部です。
「力学における時間微分」を含む「時間微分」の記事については、「時間微分」の概要を参照ください。
- 力学における時間微分のページへのリンク