出馬表の出現から戦争まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 00:02 UTC 版)
昭和初期までの競馬では、出馬投票と出走馬の発表はレース発走の40分前であり、馬券を購入しようとするファンは、開催前に各競馬倶楽部が発売する「競馬番組」(通称:ブック)を購入して、各競走に登録した馬の成績と、初日からの競走成績(当時は毎日出走するのが普通であった)を参考に自ら出走予定馬を予想して、競馬倶楽部からの出走枠順確定を待って馬券を購入していた。しかしながら、馬券購入の参考となる、馬の調子や調教に関する情報は殆ど無いと言っても良かった。 1928年(昭和3年)、一部の競馬倶楽部から出馬投票を前日夕方に、出走馬発表を翌朝とする様に変更されると、当時発行されていた競馬雑誌(月刊誌の為、予想記事は殆ど無かった)が、雑誌購入者を対象に、勝ち馬予想を記載した紙を無料で配布する様になった。 さらに1932年(昭和7年)になると、出走馬が競走前夜に発表される様になり、一部の出版社が全競走の出走馬の枠順と有力馬の情報などを謄写版で印刷したものを競馬場で無料配布する様になり、やがて1枚10銭程度で市販する様になった。これが「出馬表」である。 当初はガリ版印刷で発行枚数も限られていたが、やがて、予め出走予定馬と成績を活字で用意しておき、枠順確定すると直ちに活字を組んで印刷し、印刷し次第各地の書店や煙草店などに配送する業者や、ガリ版印刷でも、自動車の後部座席に印刷機を置いて、運転しながら印刷を続け、そのまま各地の売店に配送する業者も現れた。 戦前の競馬においては、出馬表は競馬予想において非常に重要な存在であったが、やがて日中戦争の開始に伴う統制が始まり、1940年(昭和15年)には出走馬の前夜発表が中止された事で出馬表業者は打撃を受け、さらに紙の配給統制強化により、数多く存在した競馬雑誌・出馬表発行業者に廃刊命令が下り、予想紙が1紙に統合された事で、出馬表業者は廃業を余儀なくされた。
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