内経とは? わかりやすく解説

黄帝内経

(内経 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/11 09:32 UTC 版)

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黄帝内経に記載のある9種類の鍼

黄帝内経』(こうていだいけい、こうていだいきょう、こうていないけい、黄帝内剄)は、現存する中国最古の医学書と呼ばれている。古くは『鍼経』(しんきょう)9巻と『素問』(そもん)9巻があったとされているが、これら9巻本は散逸して現存せず、現在は王冰(おうひょう)の編纂した『素問』と『霊枢』(れいすう)が元になったものが伝えられている。黄帝が岐伯(きはく)を始め幾人かの学者に日常の疑問を問うたところから『素問』と呼ばれ、問答形式で記述されている。『霊枢』は『鍼経』の別名とされ、『素問』が基礎理論とすると、『霊枢』は実践的、技術的に記述されている。

2011年、ユネスコが主催する「世界の記憶」にも登録された。

概要

『黄帝内経』は、前漢代に編纂され、『鍼経』と『素問』の合計18巻と伝えられている。その内容は散逸して一旦は失われたが、762年の時代に王冰の表した『素問』と『霊枢』が伝えられている。現代の研究では『鍼経』もしくは『九霊』は『霊枢』(9巻)のことであるとされている。ただしこの9巻本も散逸してしまって残っていない。現在は1155年南宋の史崧が霊枢を新たに校訂し、24巻81篇として編纂したものが元になっている。

『素問』が理論的であるのに対し、『霊枢』はより実践的に記述されている。『素問』の内容は医学にかぎらず、易学、天候学、星座学、気学、薬学、運命学と広くさまざまな分野に及び、医学書というより科学書と呼ぶべきであるという意見もあり、道教にとっても原典の一つとされる。現在、医学書とされている理由は、紀元前1世紀の図書目録である『漢書』「芸文志」に医書として分類されていることによる。

『内経』の原本は残っておらず、さまざまな写本が存在する。日本では京都の仁和寺に、日本最古の『黄帝内経太素』の写本が所蔵されている。『太素』(たいそ)は7世紀ころの写本で、唐代の楊上善が、『素問』と『霊枢』を合わせて編纂したものである。

『黄帝内経』18巻のうち、1部にあたる9巻を『鍼経』と呼び、2部の9巻を『素問』と呼ぶ。『鍼経』は経脈、経穴、刺鍼、また営衛、気血など系統的で詳細に説明されている。ここで9という数字には意味があり、古代中国において、数は1から始まり9で終わるとされていた。すなわち1巻には1章から9章が記述され、9章の次は2巻となる。1部は9巻×9章で81章で一まとまりとなり、『黄帝内経』は2部構成であった。『素問』は、古くは紀元前202年の前漢代の頃から編纂され始めたと考えられている。

現存する『素問』は、762年に王冰によって編纂された。王冰はそれ以前の『素問』を大幅に変更したことがわかっており、王冰の『素問』からは古い『素問』を窺い知ることはできないと批判されている。

『霊枢』は『素問』より新しい時代のもので、20年から200年ころ編纂された。『素問』より前に『鍼経』が編纂され、それが後に『霊枢』に引き継がれたと考えられている。理論よりも診断・治療・針灸術など臨床医学に重点を置いている。古来は針灸術の経典とされ、『針経』とも呼ばれた[1]。「芸文志」には、『内経』(18巻)の他に『外経』(37巻)があったとの記録があるが、『外経』は現存せず、詳しいことはわかっていない。

霊枢

  • 1586年、『黄帝内経霊枢注証発微』(馬蒔)
  • 1670年、『黄帝内経霊枢集注』(張志聡)

未病

未病(みびょう)という用語は、『黄帝内経』で初めて使用された。

「聖人は既病を治すのではなく、未病を治す」

既病(きびょう)とは、既に症状が出ている状態。『黄帝内経』では未病とは病気(病原体)は体内にあるのに、症状が体表面に出ていない、しかし治療しなければ早晩発症が必至な状態をさす。

陰陽五行説

『黄帝内経』は、陰陽五行説にのっとって記述されている。『史記』には、陰陽五行説は黄帝が定めたとされているが、『黄帝内経』については記述されていない。このことから『黄帝内経』は、『史記』より後に編纂されたと考えられる。『漢書』「芸文志」によれば、『黄帝陰陽』25巻、『黄帝諸子論陰陽』25巻などがあったと伝えられているが、現存していない。

その他

現存する中国最古の医学書としては『黄帝内経』の他に、『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)、『傷寒雑病論』(しょうかんざつびょうろん)がある。傷寒雑病論は代の改変(宋改)により元の形を留めていない。『神農本草経』も、度重なる改変で原形が失われていたが、日本の森立之が秩文をさまざまな本草書から拾輯して、復元したものが有名である。また、『黄帝内経』の内容を基に独自の体系で解説したものに『難経』がある。

外部リンク

  1. ^ 小曽戸洋『新版 漢方の歴史――中国・日本の伝統医学――』大修館書店〈あじあブックス076〉(原著2018年10月1日)、56頁。ISBN 9784469233162 

内経(うちつね|英:Uchitsune)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 00:32 UTC 版)

Ghost of Tsushima」の記事における「内経(うちつね|英:Uchitsune)」の解説

琵琶法師語り伝える武士一幕「内経の呪い」に登場する伝説英雄その昔随一弓取り謳われた本土弓の達人である。翼もつ悪霊現れたとき、退治するよう内裏より命じられた内経は、見事これを討ち果たすも、消え失せる間際悪霊から、人が悪霊見えてしまう呪いかけられてしまう。呪われた内経は目の前悪霊次々射殺していったが、それらの正体はみな人であった大勢の人を殺めてしまった内経はその咎(とが)で死罪になるはずであったが、帝(みかど)の恩情で死一等減じられ対馬島流しとなった。内経の死後も遺された弓は、再び悪鬼現れ時に手にする者を待っているとも、手にする者を呪うとも言い伝えられている。 この「内経の長弓(うちつねのちょうきゅう)」を、今は天狗守っている。

※この「内経(うちつね|英:Uchitsune)」の解説は、「Ghost of Tsushima」の解説の一部です。
「内経(うちつね|英:Uchitsune)」を含む「Ghost of Tsushima」の記事については、「Ghost of Tsushima」の概要を参照ください。

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