光電子スペクトルとは? わかりやすく解説

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光電子分光

(光電子スペクトル から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 05:40 UTC 版)

角度分解型光電子分光の模式図。

光電子分光(こうでんしぶんこう、photoemission spectroscopy)とは、固体に一定エネルギー電磁波をあて、光電効果によって外に飛び出してきた電子光電子とよばれる)のエネルギーを測定し、固体の電子状態を調べる方法である。

測定対象となる物質は主に金属や半導体であり、絶縁体はチャージアップの関係から測定には不向きである.

カイ・シーグバーン (Kai M. Siegbahn) は高分解能光電子分光法の開発で1981年ノーベル物理学賞を受賞している。

分類

  • X線光電子分光 (XPS):照射する光にX線を用いる。XPSは元素の内殻電子の状態を知る目的などで使用される。

2009年現在ではエネルギー分解能 150 μeV、角度分解能 0.1°程度の高精度の測定が可能である。

装置

現在、最先端の研究で用いられている光電子分光装置のアナライザーのほとんどは VG Scienta 社のScientaシリーズである。エネルギー、角度分解能に優れるため市場をほぼ独占している。他に旧 Gammadata Scienta 社(現 VG Scienta 社)から独立した MB Scientific社の装置や、奈良先端科学技術大学院大学の大門寛が開発した2次元光電子分光器 (DIANA) などがある。

光電子を放出するための励起光には、おもにヘリウムランプ(主に21.2 eV)やX線管が用いられるが、 SPring-8 などのエネルギー可変のシンクロトロン放射光による軟X線や硬X線や真空紫外レーザーを用いるものも開発されている。

通常、光電子分光の実験は、試料表面が汚染されないように、超高真空下(10−8Pa程度)の環境で行われる。光電子分光は表面敏感なので、測定する試料は十分に表面出しをする必要がある。

などの金属単体ではイオンスパッタやエレクトリックボンバードメント、グラファイト遷移金属ジカルコゲン化物等の層状物質では超高真空中でへき開などを行い表面出しをする。これらの表面の状態は事前に低速電子回折 (LEED) や反射高速電子線回折 (RHEED) などで状態を確認する必要がある。

角度分解光電子分光

角度分解光電子分光(ARPES, Angle-Resolved PhotoElectron Spectroscopy)は物質のバンド構造を直接測定する手法である。この手法を用いることにより、物質の超伝導電荷密度波などの特性が精力的に研究されている。

通常、光電効果により光電子は物質表面から広い立体角で放出する。このとき光電子の放出方向が物質内部での電子の波数に、運動エネルギーが束縛エネルギーに対応する。

関連項目


光電子スペクトル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 06:22 UTC 版)

混成軌道」の記事における「光電子スペクトル」の解説

混成軌道概念多く分子紫外光電子スペクトル誤って予測するという広く信じられている間違った考え存在する。これは、クープマンズの定理局在化軌道適用されるとすれば真実であるが、量子力学は(この場合イオン化した)波動関数分子の対称性原子価結合理論における共鳴意味する)に従うことを必要とする。例えば、メタンでは、イオン化状態 (CH4+) は、追い出され電子4つσ結合それぞれに起因する考え4つ共鳴構造から構築することができる。構造の数を保存するこれらの4つ共鳴構造線形結合から、三重縮退したT2状態と1つのA1状態が導かれるそれぞれのイオン化態と基底状態との間のエネルギー差はイオン化エネルギー相当し実験一致する2つの値が得られる

※この「光電子スペクトル」の解説は、「混成軌道」の解説の一部です。
「光電子スペクトル」を含む「混成軌道」の記事については、「混成軌道」の概要を参照ください。

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