偏光の工学的応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/09 14:42 UTC 版)
偏光フィルターは、特定の方向に振動する電磁場の通過を抑制することができる光学素子である。反射光は偏光しているため、カメラに偏光フィルターを装着した上で、フィルターの向きを調整すると、水辺の撮影などにおいて、水面などの反射光を除去することにより、水面の影響を受けずに水中を撮影することなどができるようになる。 液晶ディスプレイの表面と裏面には、特定の直線偏光のみを通す「偏光フィルター」が貼られており、液晶によって各画素ごとに旋光性や複屈折性をコントロールすることで、映像を表示している。 光磁気ディスクには、磁気によって偏光面が回転する性質(磁気光学カー効果)を持った物質が含まれており、レーザー光を照射して反射してきた光の偏光面を検出してデータを読み取る。 立体映画の手法としても用いられる。左右の映像にそれぞれ縦横の偏光をかけて重ねて映写し、観客は偏光フィルターの付いたメガネを装着することで、左右の映像を分離して知覚できるため、立体像を鑑賞することが可能となる。比較的低コストでカラー映像を映写できる利点があるが、非平面スクリーンでは偏光がズレてしまうため映写できない。また直偏光では顔やメガネが傾くと正常に立体視できない事があり、近年は円偏光が用いられる方式が多い。 刑務所の扉の窓には、偏光板が貼られたものがある。これは、通路の両側にある部屋の窓の偏光を、片方は垂直、片方は水平に偏光させることにより、看守は両側の部屋の内部を見ることができるが、向かいの部屋の囚人同士は互いを見られなくすることができる。 テレビジョン放送においては、地上波では偏波面の直交する直線偏波はとりわけ短距離では混信・干渉しないという性質を利用して、複数の送信所での混信を抑制する手法の一つとして、垂直偏波と水平偏波を使い分けているが、遠距離受信を想定した大出力の送信所は、水平偏波になっている。 衛星放送では、以前より一部の有料放送において垂直偏波と水平偏波で、異なる放送局のチャンネルを割り当てていたが、放送衛星においても、4K・8K放送開始以降は、右旋と左旋の二種類の円偏波では混信が起きないため、別のチャンネルを割り当てている。一方で、ラジオのAM放送は波長が長いため、アンテナの設置に必要な土地の面積の制約から垂直偏波が用いられる。 「放送衛星#左旋と右旋」も参照
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